凪の彼方 (ページ31)

今日:32 hit、昨日:10 hit、合計:43,089 hit

31 ページ31

koki side

荒れた天気がダメだったのか、それともなにか不安なことが重なったのか
原因は分からないけど今のAちゃんには処方された薬よりもふたりが必要なことは明白だった

それなのにこの天気でまだ大学の最寄り駅から動けずに居るという。

最初は少し重い頭痛だけだったのに今では少し息も上がってきた様に見える。

黒田「…Aちゃん、大丈夫だよ」

ぽんぽんと湧の真似事をしながら背中をさすってはみるものの、痛みに耐えながら小さな呼吸を繰り返す様子は変わらない。

深田「どうしよ、全然落ち着かん…Aちゃんしんどいよなあ」

『…っごめ、めいわくかけて、』

深田「んーん、Aちゃんはなんも悪くないでしょ謝らんで」

しかしどうしたもんかな〜となるべくAちゃんを刺激しないように穏やかな口調で話す深田。

黒田「俺車出して湧たち迎えに行ってくる」

こんな天気で危ないって！と急に大声出すもんだから慌てて頭をぺしっとして静止した。

だって今のAちゃんには湧とうちむが1番の薬だろうし、
当分この天気なら電車は再開しないだろう

俺が残るより多分深田がAちゃんといる方が適任だろうしな、とあれこれ考えてるうちに玄関から騒がしい声が聞こえてずぶ濡れの湧とうちむが帰ってきた。

元木「…やっぱダメだったか、」

ソファに横になって深田に介抱されるAちゃんを見て一瞬で悟ったような反応をする湧。

深田「湧くん…よかったぁ。Aちゃん、ふたり帰ってきたよ」

声掛けにも答えられないほど痛みに耐えるAちゃんにそっと近付いて優しい声で呼吸を促す湧とうちむ。

しばらくして整った呼吸がそのまま寝息に変わり俺達も安心して息を長く吐いた。

黒田「よく帰ってこれたね2人とも」

元木「なんとなく調子崩してんじゃないかと思って走って帰ろうと思ったら檜山が車出してくれた。まじサンキューな」

檜山「こんな天気の中まさか外走ってるとは思わなかったけどね…実家に車取りに行って良かったよ」

内村「深田も黒ちゃんもありがとね、Aちゃんのこと助けてくれて」

湧に頭を撫でられながらなんとか眠れたAちゃんに目を向ける。
来た時よりも随分と顔色が良くなったけどこうしてもがいて傷つく彼女を見るのは俺ですら堪えるものがある。

今は少しでも彼女がゆっくり寝れるようにと
俺たちは蚊帳の外から見守ることしか出来なかった。