凪の彼方 (ページ30)

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your side

季節が移り変わる頃、
わずかながらも自身の変化を感じながら変わらない日々を過ごしていた。

ここへ来てもう1ヶ月
黒田くんは急がなくていいよと声をかけてくれるけどそろそろこの家への対価を払わないと、と思っていた。

バイトを始めようと思うことを相談したとき意外にも湧は「いいんじゃねえの」と頭をひとなでして笑っていた。
湧は絶対反対すると思ってた、と私と同じ感想を述べた颯太は「まだ身体本調子じゃないんだから無理しないでよ」と優しく私の背中を押した。

深田「で、結局檜山くんのバイト先紹介してもらったんだ」

『うん。本当みんなには何から何までお世話になっちゃって…』

ちょうど人手が足りなくて、と檜山くんが働いているカフェを紹介してもらった。
Aちゃんにピッタリだと思うよ、と言われた店内からは少し遠くに海が見えた。
オーナーも気のいいおじいちゃんで、働いている人もお客さんも殆ど女性でみんな優しくて、働きに出る度穏やかな気持ちになれる場所だった。

黒田「やーまんラテアートもできるしあの見た目だし、結構俺の学校の子も目当てに通ってるって言ったわ〜」

深田「檜山くんってそういうところずるいよねぇ」

お前もなー、と軽口を叩きながら平日のお昼をのんびりふたりと過ごす。

黒田「あ、Aちゃん。今日ちゃんとお薬飲んどきなよ、午後から天気崩れるみたいだから」

『そっか、そうする』

私の不安定な心はいつ何が原因でどうにかなってしまうか分からない。
眠れなかったり頭が痛くなったり、ちょっとした不安要素や天気にすら左右される度自分が嫌になるけれど、こうしてみんなが協力してくれるから少しずつ自分と上手く付き合えるようになっている気がしてたのに

日が落ちる時間になると案の定天気は大荒れになった。
ザーザーと強く打ち付ける雨と雷でひっきりなしに大きな音が聞こえて落ち着かない。

あぁ、なんかすごく心がざわざわする。

『…っ、ぃた…っ』

さっき痛み止め飲んだのに全然効いてくれない。

いつもよりも激しく痛む頭を抑えて思わずその場にしゃがみこむ。

深田「…Aちゃん！…どした、あたま痛い？」

『ん…っ、』

痛みとどうしようもない心の落ち着かなさから
行き場のない感情を外へ出すように目から涙があふれる。

『っ、わくとそたは、？』

黒田「電車止まってしばらく動けないみたい。とりあえず横になろっか」

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