凪の彼方 (ページ28)

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sota side

最近の湧はなんとなくよくない気がしてた。
Aちゃんが見つかってから少しずつ、彼女への接し方が分からなくなってるんじゃないかと思ってた。

多分大切にしようとすればする程、Aちゃんが遠くに行ってしまう気がして
湧がAちゃんにどうしてあげたいのかよりも、どうすればAちゃんを繋ぎ止めておけるかに必死になっている様だった。

湧は一度大切な人を亡くしているからこそ
また同じことを繰り返すことが怖いんだと思う。

今のAちゃんはあまりにも傷だらけ過ぎてあやうい存在で、
それと比例するように湧も不安定になっている気がする。
彼女の身にふりかかる全てのことが
まるで自分の責任で引き起こされたかのような顔をする。

責任感が強くてヒーロー気質
それでいて人一倍繊細で怖がり

Aちゃんの自傷行為を知った湧はやっぱり誰よりも傷付いた顔をして拳を握りしめていた。

内村「湧のせいじゃない。誰のせいでもないんだよ」

元木「…わかってる、」

内村「…湧、ねえ顔上げて俺の目見て」

俺にとってAちゃんがおひさまみたいに思えるのと同じように、Aちゃんにとってのおひさまは湧なんだよ。

俺はそんなふたりが大切だから、
ふたりとも幸せでいてくれないと生きていけない。

内村「湧、俺はAちゃんに幸せになって欲しい。笑って、明日も明後日も過ごして欲しい」

元木「…そんなん俺だって、」

内村「今の湧はAちゃんを救いたい気持ちよりも、Aちゃんに執着してる様に見えて苦しい。…Aちゃんは湧のお母さんとは違う。いまがんばってる途中なだけで、絶対に居なくなったりしない」

俺の言葉にハッとして
そして小さくごめん、と呟いて肩を震わせた。

元木「…Aが消えそうでずっと怖かった。…母さんみたいに居なくなるんじゃないって、今の自分と向き合って余計にあいつが傷付くくらいなら、不幸でもいいから傍にいて欲しいって考えてた…俺あいつの笑った顔が見たかったはずなのに……。やっぱり大事なもんが出来んのまだ怖い、上手く大事にできない、」

内村「…大切が増えると難しいよね。…でもやっぱり俺は欲張りだから、湧にもAちゃんにも笑っていて欲しいし、俺もそこで笑ってたい。そんでもって黒ちゃんも深田も檜山もみんな幸せでいて欲しい」

先頭で手を引いて歩くほど強くなくていい。
俺達もAちゃんと横並びでゆっくり前に進めばいいよ。

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