凪の彼方 (ページ24)

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ryusei side

Aちゃんがこの家で暮らし始めて少しずつだけど俺と黒ちゃんにも打ち解けてくれるようになった。
檜山くんは元々同級生だったとかで、俺たち3人の中で一人勝ちで距離を詰めるのが早かったけど。

みんなが学校に行ってる間は基本的にAちゃんが1人になることが多いけど、仕事がオフな時は2人で過ごすことも増えていた。

この家で1番不規則な生活をしている自覚はあるが、
どんなに遅く帰ってもほぼ毎回Aちゃんは起きていたように思う。
何度か鉢合わせて簡単な言葉を交わすことが増えて、眠るのが苦手なことを知った。

深田「ただいま〜…また寝れんかったの？」

『おかえりなさい、ううん。ちょっと目覚めちゃっただけ』

深夜3時

静まり返ったリビングでぼーっと物思いにふけるAちゃんの姿が目に留まる。

深田「…お節介かもしれんけどさ、」

『うん？』

Aちゃんがあまり寝ていないことは俺を通して湧くんには伝えていた。

夜中起きていても必ず次の日は俺たちの朝ごはんを用意してくれてる。
でも日中2人きりになったときリビングでうたた寝する度に何度も魘されて短い睡眠を繰り返す。時折体調が悪そうな姿もあった。

一日の中で取れている睡眠時間が極端に少ないことへの自覚はあるんだろうか？
正直Aちゃんを傍で見ているとこっちがしんどくなることが多々あった。

深田「…いや、やっぱなんでもないや。Aちゃん、俺と深夜の背徳ディナーしよう？」

『…、もう、こんな時間からカップラーメン？仕方ないなあ、お湯沸かしてくるね』

俺に確信を付かれるのを知ってか知らずか
小さく息を吐いて困ったように笑う顔があまりにも儚くてその先に続く予定だった言葉を飲み込んだ。

ここに来たての湧くんとうっちーくんは2人で1つみたいな雰囲気を纏っていてなんだか依存にも似た、そんな関係で支え合ってるように見えた。

そこにAちゃんが入ると2人の関係性はまた違って見えて

湧くんがAちゃんに向ける目線は単純な心配とか恋心とか簡単な言葉じゃ言い表せない感情がそこにはあって、
そんな湧くんを心配そうに気にかけるうっちーくんがいて二人の世界はAちゃんを中心に回っている気がした。

俺にとって3人とも大事な友達で、できることなら力になりたいと思うけど

部外者の俺たちが彼らの世界に踏み込むのは些かリスクがありすぎる
たったそれだけが今の俺にわかる唯一のことだった。

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