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waku side
大学の友達と飲みに行った帰り、
ほろ酔い気分で繁華街を歩きながら無意識に黒ちゃんがAを見かけたと言っていた辺りに歩を進めていた。
この町でAが生きている
中々Aの手がかりが掴めない状況が続いてるから
俺も颯太もそれだけで十分だと言い聞かせて過ごしていたけれど
本音はやっぱりどうしてもAに会いたくて。
下品に光るネオン
鼻につく女の匂いと現金の塊と化してる男たち
忙しなく移り変わる光景に酔いも冷めた。
勢いで来ちゃったけどやっぱ来なきゃ良かった、なんて
第一、こんなところでAを見つけたって
俺の自己満に過ぎなくて
あいつを逆に傷つけるだけなんじゃないかとさえ思えてきた。
元木「…やっぱかえろ。」
来た道を引き返そうと振り返った時、
傍の路地から男の怒鳴り声とガシャン！と大きな音がした。
こんなとこだから揉め事も日常茶飯事なんだろう
周囲の人はまたか、と言った顔でまたすぐに猫なで声で客引きを再開する。
音の方へ控えめに目をやると頬を抑えて地面に倒れこむ女の子と黒服の男が札束を懐にしまいながら路地から出てくるところだった。
取り分で揉めたのかなんなのか知らないがすげー世界だな、なんてのんきに思っていたけど
俯く女の子に見覚えがある
元木「…………A……？」
『……わ、く、……！』
そこには俺が必死に探していたAが確かにいた。
数年ぶりに会ったっていうのに全然変わってない。
出会った頃とおんなじ
全部を諦めたみたいな顔してる
俺がAに1歩近付くと
苦虫を噛み潰したような顔をして細い路地裏を駆け出した。
元木「A…！！待てって……！！」
ずっとずっと会いたかった
それなのにこんなのってあんまりだ
俺はAにそんな顔させたくて探して訳じゃないのに。
走り去るAの背中を追いかけながら
海の中に消えていきそうなあの時の姿を思い出す
今ここでつかまえないと
次は本当に波にさらわれてしまう
そんな気がして無我夢中で追いかけた。
元木「……っ捕まえた…！A…、」
細っこい手首が小さく震えてる
俺はAを助けたいとか守れなかったとか
ごちゃごちゃ色んなことを考えながら
Aのいない時間を過ごしていたけれど
Aは何を見て何を考えながら生きてたのかな
少しずつでいいから聞かせてよ。
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作者名：Nanashi | 作成日時：2024年1月8日 15時
