凪の彼方 (ページ15)

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waku side

みんなにAのことを話してから数ヶ月が経過したが
一向に彼女の手がかりは見つからなかった。

夕食を終え部屋で過ごしていた所に珍しく檜山がやってきた。

檜山「湧、ちょっといい？」

元木「おー、なした」

檜山「この前実家帰ったらたまたま妹が養護施設の子と遊んでるとこ迎えに行ったんだけど」

これ、と1枚の写真を差し出してきた。

そこには小学校低学年位の女の子の隣で控えめに笑うAが映っていた。
卒アルで見た時よりは顔色がいいように見える。

ドクリ、と心臓が脈を打つ。

元木「これ、いつの…」

檜山「施設の玄関に写真でいっぱいのコルクボードがあってさ、2週間前顔出しに来た時に撮ったものだって言ってた。…ちゃんとAちゃん、生きてたよ」

元木「そ、っか…、よかった…」

写真を抱きしめて柄にもなく泣き崩れた。

離れ離れにはなったけど父親の脅威から逃れて別の土地で笑って生きてるもんだと思ってたから
あの日ひとりぼっちで傷付いてるAを知ってから
もう二度と会えないんじゃないかって正直ずっと不安でたまらなかった。

檜山「うっちーもきっともうすぐ帰ってくるから伝えてあげないとだね」

元木「…あぁ、本当にありがと…ッ」

本当は頑張ったな、大丈夫か？ってすぐにAを抱きしめてやりたいけど

生きてくれてさえいれば、
今はその事実だけで十分だった。

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