凪の彼方 (ページ12)

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waku side

──────2年後

Aと出会った高校を卒業した俺と颯太は同じ大学に進学していた。
高校卒業を機に家を出て、生活費を抑えるために2人してシェアハウスに入居した。

地元から離れてみると俺たちがいかに閉鎖的で小さな世界に生きていたかを思い知った。

あれからAには1度も会えていない。
もしかしたらAが戻ってくるんじゃないかと残りの高校生を過ごしてはみたものの一向に帰ってくる様子はなし。

Aのことを考えるとあの町を離れるのは少し躊躇う気持ちもあったが、彼女にとってあの町での出来事はもう思い出したくもない記憶になっている気もしていて。

どこか別の土地であいつが笑って生きているのならそれでいいと思った。

俺も颯太もAのことを忘れた日は1度もないが、そう簡単に彼女の話を他人にする気にもなれず。

シェアハウスで生活を共にしてこいつらは信用できる、とやっとの思いで友人に打ち明けた時
俺たちは彼女が存在していた形跡をやっと掴むこととなる。

深田「つまりそのAちゃん？は高校から行方不明ってことなん？」

内村「行方不明っていうかなんて言うか…まぁ、親戚の家に引き取られたっていうのは聞いたけどそれっきり何も」

黒田「なんか俺聞いてるだけで泣いちゃいそう。湧もうちむもその子もみんな幸せになって欲しい。俺達にできることがあればなんでも手伝うからね！」

元木「ご飯の時間に急にこんな話して悪ぃな…お前らみんな出身地ちげえしなんか知らねえかな〜と思ったんだけど…」

そうはいかねえよな〜とソファに項垂れるとこの中で唯一口を閉ざしていた男が口を開いた。

檜山「…その子、俺知ってるかも」

バタバタと自室に戻り何かを抱えて戻ってきた檜山。

黒田「やーまんなにそれ、卒アル？」

まさか、と思った。
思わず颯太と目を合わせ、檜山がめくるページに身を乗り出す。
確か檜山の地元は俺たちの住んでた港町と丁度対岸だったはず。

檜山「これ、この子じゃない？」

元木「…っ！A…」

内村「これ、Aちゃんだ…！」

そこには俺たちの知ってるAより随分と痩せ、
出会った時のような全て諦めた顔をしたAが映っていた。