凪の彼方 (ページ11)

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your side

自分の現状と気持ちに折り合いがつかなくなってから、
湧と颯太に助けてもらうことが増えたように思う。

近所や他のクラスメイトが私の家を話題に挙げているということは何となく教室の空気から察しが着いていたが、
傷だらけでどうにか学校に行った私をいつも「来んのおせーって」と温かく迎え入れてくれた。

この町に来てすぐの頃、そういえば1番最初に手を掴んで海の底から引っ張り上げてくれたのもふたりだったなあと、昔の出来事のように思う。

あの時から湧に対して小さな違和感があった

湧が私を見る度に
私なんかよりももっと傷付いた顔をする

湧は私を通して一体何を感じているんだろう？

きっと湧は優しいから、
聞いたら答えてくれるに違いない。
でもそれと同時に私の傍からも離れていくような気がして聞けなかった。

何かを抱えたもの同士
身を寄せあって保たれた微妙なバランス

お互い守るように私達は鈍感を演じて傍にいた。

机に突っ伏した私の頭をふわりと撫でる暖かい手。

元木「学校、来てたなら連絡しろよ。こんな空き教室に居たら気付かないだろ」

『…うん、ごめん』

ズキズキと痛む頭が重くて一向に顔を上げない私。
せっかく学校に来れたのに今日は一段と身体が鉛のように重かった。

元木「なに、頭痛てぇの？」

今度はぽんっと控えめに手を乗せる。
「まあ、知ってたけどな」とポケットから何かを取り出し机に置く。
何が置かれたのか確認するのにゆっくり顔を上げた私に飛び込んできたのはやっぱり泣きそうな顔をした湧で。

『…わく、？』

元木「俺のだけど飲まないよりマシだろ。それやるから飲みな」

今度は小さく息を吐きながら誤魔化すように優しい笑顔を浮かべ、私の手に連なった痛み止めを乗せた。

『…ん、のめた。ありがと』

元木「薬効くまでここに居ようぜ。そのうち颯太も来るだろ」

『ふたりともなんでいつも私を見つけられるの？』

元木「何となくだよ。Aすぐどっかいなくなるからなー。俺と颯太の嗅覚鍛えられたんじゃね笑」

そう言って今度の笑う顔はいつもの湧で安心した。

『私、湧の笑った顔がすきだな』

元木「…なんそれ」

『何となく、だよ』

ふたりには笑っていて欲しい心の底から。
ずっと私の太陽でいて欲しい

そんなふたりに照らされて生きていきたいのに
その数日後私は家族を失ってこの町を出ることになった

サヨナラは言えなかった。

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