凪の彼方 (ページ2)

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waku side

高校2年生

都会の喧騒から少し外れた港町

ゆっくりとした時間が流れるいわば田舎と呼ばれるこの町に
季節外れの転校生がやってきた。

見慣れない華奢な白い手が鍵盤を叩く

泣きたくなる程儚い音色

微かに潮の香りを纏った初夏の風が音楽室を包む

瞬きしたらそのまま風にさらわれて居なくなるんじゃないか、なんて

初めて彼女を見た時俺は割と本気でそう思った。

元木「…それ、続きねえの？」

手が止まり、じっと窓の外を眺める彼女に入り口から声をかける。

ゆっくりとこちらに振り向き、一瞬ハッとした顔をする彼女。

『いつもここから先がどうしても思い出せないの』

そう言って鍵盤から下ろした手を胸の前に重ね控えめに笑う

埃が陽の光にあたって彼女の周りをキラキラと輝かせる

あぁ、なんて儚いんだろう。

元木「なんだそれ、笑」

それが俺とAが初めて交わした言葉だった。

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