Crazy about you 【流川楓】６（完結）

何のために ページ14

―――Kaede's mind





14時間以上のフライトを経て、羽田に到着。


ドラフト指名されたことで、アメリカでもてんやわんや。んでもって、日本の企業からも仕事の依頼が鳴りやまないとマネージャーの郷田から伝えられた。



日本には、いつだって行きたい。



Aにいつまで寂しい想いをさせているのかと、自分が情けなくなる。

電話先で力なく笑う彼女が、更に俺を焦らせて。




―――いつまで待っていてくれるんだろうか。あんな極上の女が。



アメリカに居ても、バスケ選手としてCM撮影に駆り出されたりすることはあった。でも、乗り気ではないことも皆知っていて。

けど、日本の企業が流川楓とスポンサー契約を結びたいという話を聞き、すぐに飛び立ちたい旨をマネージャーに伝えると、「分かりやすい奴だ」と大笑いされた。




郷田「とりあえずホテル行くか」



楓「ん−。荷物だけ置きに行く。そしたら出かけてもいいか？」



郷田「ったくお前…。んなら荷物貸せ。俺がホテルに持っていく。どんだけ彼女に会いたいんだよ。まあ、そりゃそうか。１年ぶりくらいなんだろ？日本は」



楓「ん」



郷田「Aちゃん、出版社だろ？激務だぞ〜〜。定時の時間なんかに行っても会えないぞ〜〜〜」



楓「まあ、待てるだけ待つ。連絡したら気ィ遣うだろうから連絡はしねー。つーか郷田、Aちゃん呼びヤメロ」



郷田「流川がAちゃんの話ばっかりするから、俺も顔見知りみたいな気持ちになってるよ」



楓「……」



郷田「ははは！そんな目で見るなよ。実際、すげー良い女だもんなー。羨ましいことこの上ない。明日の１３時にアポ入ってるから、ハメ外しすぎるなよ。あと、お前そのビジュアルで日本ではもう大騒ぎになってるらしいから、サングラスとマスクくらいしていけよ」



楓「不審者じゃねーか」



郷田「もう日本でもアメリカでも、大スターになっちまったんだから。自覚持て」




そう言って郷田は俺をタクシーに乗せ、「グットラック！」と古臭いジェスチャーで送り出した。


しみじみ、俺は人に恵まれている。


日常会話はもちろん英語でできるが、アメリカの”住み方”を教えてくれたのがマネージャーの郷田だ。

彼は日本人だが、大学を卒業してずっとうちのチームに勤めている敏腕。



そんな奴が、こうして一緒に来日に付き合ってくれるのだから有難い。



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