指令9《オチャメサン?》 ページ10
__「……お前さん、肝が座っとるな」
「……ねえ、バーガーキ
「バーガーバーグぜよ!!」
そのツッコミはさっき聞いた。
……とは言わなかった。
「なぜ私の肝が座ってる、って思ったの?」
「……カイもそうだが、取り乱した様子も無く、他のヤツに目を向けられたからぜよ。
それに、高校生とはいえ、大人に混じっても気圧される様子も見られんかったしな」
「……もしかして、自己紹介のときのこと?
あれは、私が大人であるカイ兄さんの妹だから。黙っているよりも、先に自分から言った方がいいと思った」
「それだけじゃねぇ。お前さんは誰よりもカンナの様子を気にしてた。
カンナとしては、安心しただろうぜ」
思い浮かぶのは、カンナのあのひどく怯えた姿。
……彼女の傍にいたのは、彼女のためだけじゃない。
「……チームワークが乱れると、ここにいる間の居心地が悪くなってしまう。
どんなに短い時間であっても、それは嫌だから」
半分本当で、半分は嘘。
チームワークが多少乱れたところで、居心地はそこまで悪化しない。
状況が状況とはいえ、所詮ここで出会っただけの仲。
そこまで敏感になるのは、この中でもギン君やカンナちゃんくらいだろう。
……でも、そのせいで帰れないのは嫌だから。
「ふふ……。アイとしては、それだけではありませんよ」
それまで黙っていた兄さんが、いきなり声を上げるものだから、私もQタロウさんも驚いた。
「先程からアイが間違えているアナタの名前……アレ、わざとですよ」
Qタロウさんにとって兄さんのその言葉は、爆弾もいいところだったのだろう。
探索する手が止まってしまっている。
「アイなりに……場をなごませようとしているのです。
皆不安なのは変わりません。ですが、人のために何か役を買ってでることは、中々出来ることではありません」
……!
兄さんにそう言って貰えて、少しだけ自信が出てきたような気がする。
私の感情が入ってはいるのだろうけど、兄さんの言葉は私の胸の奥にストンと入ってくる。
「……しかし、やはり名前をわざと間違えるのは頂けませんね」
……わかってる。
分かってるからQタロウさんの質問にも答えたの。
「……それじゃあ……Qタロウさん、カイ兄さん。
あたらめて、よろしくお願いします」
数歩進んで、頭を下げる。
一瞬ポカンとした兄さんとQタロウさんだったけど、すぐに表情を緩ませた。
今はまだ、過去のことは考えずにいても良いよね、きっと……。
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水菜 燁(プロフ) - Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかんさん» 私、妹設定が大好きなんです……!コメントありがとうございます、とても嬉しいです……!更新、頑張りますね! (2023年5月9日 7時) (レス) id: 8fb4aadd0c (このIDを非表示/違反報告)
Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかん(プロフ) - うわん妹設定めっちゃ好きです……文章も凄く読みやすいですね…!無理しない程度に更新楽しみにしていますー! (2023年5月9日 0時) (レス) id: 71db0bbe64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水菜 | 作成日時:2023年5月8日 0時