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指令3《サグリアイ》 ページ4

暗闇に、二つの足音が響き渡る。

私と兄さんの間に会話はない。
が、重い雰囲気ではなく、むしろこっちの方が私たちらしい(と私は思っている)。


「アイ
大丈夫ですか……?」


不安げな声音が語りかけてくる。


「?」

「……貴女も分かっているでしょう。私達を誘拐した組織のことを」

「……うん。あの人はここ数年、かなり上機嫌だったから」

「「……」」


私は、兄さんの手を握った。


「……!」

「私は大丈夫。怖がるより生きる道を探した方が得策。
帰ったら、また一緒に料理を作ろう」


兄さんはポカンとしていたが、すぐにふっと笑うと、私の手を握り返した。


「……そうですね。エッグベネディクトでも作りましょうか」

「……うん。楽しみ……!」


暗闇でも、お互いがどんな顔をしているのかが分かる。
私も兄さんもきっと笑顔だろう。


また一歩を踏み出して、私は__

__意識を失った。







「はいはい、注目ー」


手を叩く音につられて、音の発生源である金髪の男を見る。


「多分俺たちは皆、同じことを思ってる
『ここはどこなんだ? なぜ自分は連れてこられたのか?』
分かってるのは自分が何者なのか……くらいだ」


「何が言いたいのでしょうか……?」

「ここはひとつ。
自己紹介をしようじゃないか。
お互いの不信感を、少しでも払おう」

「自己紹介……ですか」

「それしかないだろう」

「……いいと思う。私は賛成」

「ほら、こう言う子もいるんだから。
……ね? サラちゃん」


……! サラ……!
ジョーがいるのは気付いていたけど、まさかサラも来てたなんて……。


「……なんで私に振るんですか……。
というか、サラちゃん はやめて下さい」

「じゃあ尚更やるべきだ。他に呼び方が無いんだから」


……。


「えー……つーワケで、俺たちはお互いのことをよく知るべきだと思いまーす」


気が抜ける……。

でも、この状況でリーダーシップを取れるあたり、冷静さはある、ということ……。

……警戒しておこう。


「にゃんでー? 知らないおじさんに個人じょーほー教えたらいけないってママに言われてるニャン!」


そう言った不思議な格好をした子供に、声を上げた男性がいた。


「素晴らしい! 親の教えを守る、しっかり子ですねぇ……!

しかし確かに今は緊急事態……むむむ……!

ならば我々大人が怪しい人間では無いことを証明しなくてはなりませんねぇ……ククク……!」


自己紹介が、始まる。

同じ境遇の仲間となるか……はたまた、


命を狩り合う敵となるか……。

指令4《ショジヒン》→←指令2《ドウシテイルノカスラ》



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水菜 燁(プロフ) - Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかんさん» 私、妹設定が大好きなんです……!コメントありがとうございます、とても嬉しいです……!更新、頑張りますね! (2023年5月9日 7時) (レス) id: 8fb4aadd0c (このIDを非表示/違反報告)
Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかん(プロフ) - うわん妹設定めっちゃ好きです……文章も凄く読みやすいですね…!無理しない程度に更新楽しみにしていますー! (2023年5月9日 0時) (レス) id: 71db0bbe64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水菜 | 作成日時:2023年5月8日 0時

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