指令2《ドウシテイルノカスラ》 ページ3
部屋の隅に出来るだけ寄って、助走をつけて兄さんのベッドに飛び乗る。
そうすると、ベッドのスプリングが跳ねて、私の手がやすりに届く。
「……取れた!」
「よくやりました、アイ! きっと
「やってみる!」
私はやすりで鍵を削るが……
__削れない。
赤い粉が少しだけ零れる程度で、とても制限時間内に拘束具の鍵穴まで削りきる事は出来そうにない。
《残り時間は、あと半分を切り__》
部屋が赤く染まると同時に、私はいつも携帯している小刀を取り出して__。
「……っ!」
兄の拘束具を切った。
✽
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「助かりました、アイ。……ありがとう」
「ううん、無理矢理で……ごめんなさい。怪我はしてない?」
拘束具は思っていたよりもきつく着けられていたようで、私も兄さんも器具と接していた部分は赤くなっていた。
「ええ、ありませんよ。アイのお陰ですね」
「……良かった」
念のために、ちらりと様子を見ても、怪我をしているようでは無かったから、安心して肩の力が抜けた。
でも、まだ、最初の試練は終わっていない。
緊迫感を持たせる赤いランプはもう消えているが、扉は開く気配を持たない。
「確か、この部屋のどこかにあるスマートフォンに情報がある……音声案内ではそう言ってましたね」
「探そう」
とは言っても、狭い部屋の中、いくら薄いスマートフォンだとしても、物を隠せる場所は限られてくる。
私はベッドの下を覗いた。
「……あった!」
__私がいつも掛けている、スマホショルダーと共に。
そう言えば、死の方に意識が向いていて、スマホショルダーが無いことに気が付かなかった。
スマホを起動させると、見知らぬ文章が表示された。
__最も勝利から遠き者を守れ__
__その命に替えてでも__
「……?」
何の事かさっぱり分からないが、大事な事かもしれないと思い、文面だけ覚えておく。
画面をタップすると、四枚の写真が出てきた。
パーセンテージと人の名前、そして職業の順に書かれた紙の写真が、それぞれ画面に映っている。
時間が無さそうなため、さっと目を通す。
そうすると、ある名前が目に入り、作業が止まってしまった。
(……彼は、元気だろうか。私の、初めての友達……)
花が咲いたような笑顔をする人だった。
彼の名前を漢字でどう書くかは知らないが……この人は、彼と名前の読みが同じなのだろうか。
「アイ、そろそろ行きましょう」
「……うん」
また、会えるといいな。
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水菜 燁(プロフ) - Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかんさん» 私、妹設定が大好きなんです……!コメントありがとうございます、とても嬉しいです……!更新、頑張りますね! (2023年5月9日 7時) (レス) id: 8fb4aadd0c (このIDを非表示/違反報告)
Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかん(プロフ) - うわん妹設定めっちゃ好きです……文章も凄く読みやすいですね…!無理しない程度に更新楽しみにしていますー! (2023年5月9日 0時) (レス) id: 71db0bbe64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水菜 | 作成日時:2023年5月8日 0時