指令1《キミヲマモル》 ページ2
目が覚めると、知らない天井だった。
ベッドに横たわっていて、背中や首の痛みは無い。
体には拘束具。
辛うじて隣を見ると、少し前に意識を取り戻していた兄__
「アイ? 目が覚めましたか」
「……兄さん、ここは……?」
「……分かりません。
サラさんが今、どこにいるのかも」
__《最初の試練、音声案内を開始します》
この状況下、その声に意識を向ける他はない。
私と兄さんは、言葉を交わすのを中断した。
《これからお二人には、この部屋のどこかにある鍵を見つけて、拘束を解いて頂き、さらにこの部屋にあるスマートフォンから、情報を手に入れて頂きます。
鍵は一本しかありませんので、どちらが使うか、よく相談して決めてください。
なお、制限時間を過ぎるとベッドが、バタン! と閉じてしまいます。
それでは、このスリルを存分に楽しんでくださいね》
プツン、という音が最後に聞こえると、その音声はもう流れなかった。
迫り来る死に焦る気持ちをなんとか抑えて、自分の周りや服に鍵が無いかを探すが、ベッドの上には無さそうで、私が今来ている服は着物だ。
とてもではないが、着物に鍵を忍ばせることは無理だろう。
「……アイ、鍵が私の服のポケットにありましたよ。はい、どうぞ」
「えっ……?」
鍵を反射的に受け取る。
慌てて返そうとしたら、兄さんは既に手を引っ込めていて、投げ返そうなんてしたら鍵が床に落ちてしまう。
諦めて私は鍵を使った。
拘束が解かれた私を見て、兄さんはホッとしたような顔をしたが、まだ安心出来る状況じゃない。
ここままだと、兄さんが潰されてしまう。
部屋を見渡して、意味ありげに書かれた四桁の番号を拘束具のダイヤルに入力してみるが、何の意味も無かった。
「兄さん、駄目! 番号は意味が無かった……最悪、力ずくで……」
「待ってくださいアイ。私の視界の隅に、何やら意味ありげな紙があるのです。……色的には、やすりですかね」
それだ、と思い、天井から紐で吊るされているやすりを取ろうとしても、低い身長が災いして届かない。
悔しさから、唇を噛む。
「ごめんなさい、兄さん……届かない……」
「……アイ……」
「……だから、備えて。今から揺れるかもしれない」
私は、諦めない!
私の希望は、絶対に死なせない!
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水菜 燁(プロフ) - Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかんさん» 私、妹設定が大好きなんです……!コメントありがとうございます、とても嬉しいです……!更新、頑張りますね! (2023年5月9日 7時) (レス) id: 8fb4aadd0c (このIDを非表示/違反報告)
Rinoko*@名前変えたいが名前が思いつかん(プロフ) - うわん妹設定めっちゃ好きです……文章も凄く読みやすいですね…!無理しない程度に更新楽しみにしていますー! (2023年5月9日 0時) (レス) id: 71db0bbe64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水菜 | 作成日時:2023年5月8日 0時