確かに恋だった［YouTuber短編集］

夏は終わらない(Eiji) ページ17

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八月が終わる。夜でも残暑はまだ厳しいけれど何処かで蝉が鳴いてる音が聞こえて、夏が過ぎ去って行くのを感じた。あたしの大学生活最後の夏は、至って平凡であっけなかった。バイトに行ってたまに遊んで朝まで起きてだらだら過ごす。その繰り返し。それでもこうして無意味にクーラーの下で過ごす時間も今年で終わりかなと思うと、少し切ないし寂しく感じてしまう。そんな時、着信音が鳴った。




"着信中 エイジ "



あたしの体温は一気に2度くらい上がり頬は緩む。なんてたって、"好きな人からの不意の電話＝最高"だ。すこし深呼吸をして通話ボタンを押す。



「あ、起きてたんだ」


電話越しで響く優しい声。少し低くて落ち着いたエイジの声が身体中に染み渡って行く。にやける頬が伝わらないよう気を誤魔化すように足の爪のネイルをさわった。


「エイジも起きてたんだね。あ、いっつもか」


「そう、俺寝れなくてさ。暇なんだよね」


だから電話かけてみたー、とその言葉さえ都合よく捉えてしまう。少し剥がれかけていた薬指を見て、そうだネイルを変えよう、と肩と耳で携帯を挟みマネキュアを選んだ。



「あたしが起きてなかったらどうしてたの？」



「…んー、起こしに行ってた？」


何故か疑問符の付いてる彼の声はなんだか楽しそうで、釣られてあたしはやっぱりニヤケが抑えられない。また外から蝉の声が響いている。

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