例えばのお話 (ページ39)

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▽一般人設定(幼→大人)

「ねえ、まま。2月ね、ひだかが、たんじょーびなの」

「あら、そうなの？
じゃあおめでとう、って祝おうね」

「うん。……それでね、ぼく、なにかあげたくて……」

「そうね、、それじゃあお花とかどう？」

「おはな……」

転園してきた俺に最初に話しかけてくれた彼。
いつも隣にいて明るい彼。
先月の俺の誕生日には一緒にご飯を食べた。
そんな彼に何かお返ししたくて、でも園児が考えられる範囲には限界がある。
そこで、母に助けを求めるとお花がいいんじゃないかと言われた。

その時あげた花は確か、パンジー。
母が育てていた花たちの中で、1番手軽で可愛らしいとすすめられた花。
色は…忘れた。

彼は目を丸くして、キョトンとしていた。
その沈黙が園児の俺にはいたたまれなくて、着いてきてもらっていた母の方を振り返ろうとした時、キュッと俺の手が彼の手で包まれた。

「ありがとう！すっごいうれしい！」

目を細めて笑う彼の表情を今でも覚えている。

今でも彼には花を贈っている。
誕生日に限らず、何も無い日にも。

最初は単純にあの笑った顔が見たかったから。
次第に、あの花似合いそうとか、この花言葉ピッタリとか、
知れば知るほど花をあげたくなっていた。

いい大人になった今だから
引き返せない時だろう。
多分…彼は俺の事が好きなはず。でもそれで満足してる。

友情を超えるには俺がアクションを
起こさないと。
俺も好きだ、と伝えるにはどういうのがいいのか必死で考えた。

考えて、調べて、店行って……
やっぱりこの方法しかない。

浮所とのメッセージを開いて
“明日家行っていい？”
と送る。

行けたら実行、行けなくても別の日実行。
そう心に決めた。