人生万事塞翁が虎5 ページ34
薄暗い倉庫の中。
太宰は木箱に座り「完全じ/さつ読本」なるものを読んでいる。
敦はそのタイトルを見てうげ、という顔をしたが、まぁこの人ならありえるか、と納得し、虎が不安なようで足元に視線を落とす。慣れとは怖いものである。
Aが疲れたと言ったので、例のごとく彼女に甘い高杉は俺の体にもたれて寝ろと甘やかした。これから虎が出るかもしれないというのにも関わらずAは爆睡中だし、高杉はそんな彼女を後ろから抱きかかえるようにしてうとうとしていた。
「……本当にここに虎は現れるんでしょうか」
「現れる」
太宰のきっぱりとした口調に、敦の肩が震える。
「でも、虎が現れても、私の敵じゃないよ。こっちには高杉君もいるしね」
「……高杉さんはAちゃんしか守る気なさそうですけど」
「……確かに」
再び訪れる沈黙。
がた、と物音がした。
高杉が目を開け、刀を抜きかける。
突然高杉の腕によって彼の方へ強い力で引き寄せられたAが目を覚ました。
『何……虎?』
「いや、風でなにか落ちたんだろう」
「違いますよ……人食い虎だ、僕を食いに来たんだ!」
「違うよ、敦君。高杉君も落ち着きたまえ」
「太宰……何故分かる?」
高杉はなお警戒しながら太宰に問うた。
太宰は本を閉じ、知性溢れる目を敦に向ける。
「そもそも変なのだよ。孤児院が、経営が傾いたからといって児童を追放するわけがない。半分くらいよその施設に移すのが筋だ」
「太宰さん、何言って」
「君の行く所先々に、虎が現れる____答えは1つだ。
国木田君が言っていただろう。この世界には、異能の力を持つ者がいると。そしてそれで成功する者もいれば、力を制御できず身を滅ぼす者もいる」
高杉がAを抱き寄せた。刀を抜き____敦の方へ向ける。
「君だけが分かっていなかったのだよ。
君も異能の力を持つ者だ。
現身に飢獣を降ろす、月下の能力者」
敦の体が、白い虎へと変化してゆく。
『そんな、敦君が虎だったなんて……』
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風寧 - Юрияさん» ありがとうございます!これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします! (2019年6月15日 20時) (レス) id: 20b2ea3bbd (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - どっちも大好きなアニメで読んでいて、とてもニヤニヤしてしました!更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年6月15日 17時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 筑最さん» ありがとうございます!多そうで意外と少ない(?)組み合わせだと思ったので合体させちゃいました笑 更新頑張ります! (2019年6月11日 21時) (レス) id: 7e3874af1e (このIDを非表示/違反報告)
筑最(プロフ) - うわー好きなやつが合体しちゃったよー嬉し過ぎて泣きそうだよーこれからも頑張って下さい。 (2019年6月11日 0時) (レス) id: 27d7716bc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風寧 | 作成日時:2019年5月26日 0時