魅惑のデコルテ (ページ4)

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高校生の朝は早い。
起きたらすぐさま顔を洗って身支度して、朝ご飯食べたらもう出る時間。だけど家を出る前に鏡を見て笑顔の練習をすることだけは欠かさなかった。

寝坊したのにも関わらず意地でも鏡の前でヘラヘラしてたから当然通学路はダッシュ。

「あ！北斗！」

校門を通る時にすぐ傍にある時計を見ると、SHRが始まるまであと7分。こんなにもまだ時間があるなら走る必要無かったかななんて後悔。

下駄箱に着いてローファーを脱いでいたら、目の前を通ったのは見慣れた顔だった。

「お前なあ、高校では "北斗先輩" って呼べって…」
「あーあー！分かった！北斗センパイ！」

多少乱暴にローファーを仕舞って上履きを履いた。急いで見慣れた顔の背中を追いかけると、やっぱりそれは北斗で。振り向きざまに私の顔を見た北斗は飽きれたように溜息をついた。

北斗とは中学生の時から仲良くしてもらってる2つ上の近所のお兄さん。ひょんなことで話すようになって、ふとしたことで "仲良くしてくれるお兄ちゃん" から "好きな人" に変わった。

「何？また朝走ってきた？」
「私の朝のルーティーンなので」
「そんな誇らしげに言うなって。…まあそんなところだと思ったよ、前髪グチャグチャ」

北斗はいつまで経ってもお兄ちゃん面をやめない。
今だって私のことを見る目はまるで妹を見るかのようで、ゴツゴツした北斗の手が私の前髪を整える。

ねえ北斗センパイ、私ってそんなに子どもみたい？

「もう、北斗の妹じゃないんだから」
「北斗 "先輩" な？」

前髪を整え終われば、そのまま私の頭をポンポンと優しく叩いた。拗ねたように頬を膨らましてみるけど、いっつもその言葉を残して逃げられちゃう。

センパイって付けたら妹じゃなくなるの？ねえ、

「…あと、お前はずっと妹だよ」

目線を合わせるように膝を折った北斗。
ニヤリと口の端をクイッと上げて "折角走ったのに遅刻すんぞ" って階段を上って行ってしまった。

何億回目かの惨敗に溜息をつく。

「──こんなとこで何してんの？」
「え？あ、…樹センパイ！」
「おーおー、朝から元気なことで」

突然後ろから声を掛けられてビクッとする。後ろを振り向けば、セカンドバッグを肩にかけて手をポケットに入れた──…田中樹センパイが居た。

to be continued…