藤井先輩、 続

14 大毅side ページ14

流星は最近、少しだけ笑うようになった。



少しだけやけどな。





あんなにひどかった女遊びも
今となっては、めっきり辞めて

一切女と連絡も絶ってしまった。





それもこれも、理由は全部
あの後輩のAって子のおかげやと思う。







「なあ、絵文字って、つけた方がええん？」



ある日 突然、流星が俺に聞いてきた。
当然、俺は最初びっくりしたわ



今までメールなんかせえへんかったのに
ここ最近じゃ、ずっと携帯とにらめっこしてるしまつ。




「 ...... やっぱ俺には絵文字は無理や。」





幸せそうに文字を打ってはポケットに入れ、
出しては入れ、の繰り返し。




正直、きしょいと思ってしまうくらい






＿＿＿＿＿＿ やけど今、



俺の目の前におる流星は
ただ静かに廊下の窓の外を見つめて

俺なんか見えてないような
そんな感じだった。




俺も、さっきあの現場におったから、
何があったのかはわかりきっている。





「 ....... おい、流星」



「 ........... 」




だめか。




「 ....... あんな流星、気持ちはわかるけど ..... 」


「どおしたらええん」


「 ..... え？」





慰めようとした俺の言葉を
窓の外を見つめる流星の言葉が遮った




「いっつもそうや。
あいつ ...... 俺が目の前に現れると
いっつも困ったような顔すんねん。」



「 ....... 」




「Aは俺と付き合ってて 楽しいんやろか」





「 ...... 流星、」




「 不器用やねん、ほんま俺」





そう言って流星は俺の横を通りすぎた





通りすぎる時に一瞬だけ見えた流星の表情は
今にも泣き出しそうな、そんな顔に見えた










「 ....... あほやん、俺」








初めて、流星がこんなに弱ってんのに








何も言えへんかった。

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