恋する乙女よ、嘘をつけ。 ‐ 2 (ページ50)

今日:3 hit、昨日:16 hit、合計:91,626 hit

▽ ページ50

．

「1歩、踏み出す勇気」

携帯をぎゅっと握る
もう、ダメ元だっていい。

この前ので惚れたって嘘をついたっていい。
行動しないと変えられない、って気づいた。
もう1度深呼吸をして、

＜頑張ってね！)

佑亮から届いたラインにぐっと親指をたてたスタンプを送って家を出た。
神社までの道のりは今までよりも遥かに遠く感じて
近づくにつれて心拍数が上がるのがわかる。

……どうか、うまくいきますように。

▽

「Aちゃん、」
「あ、先輩」

境内の端で座っていたAちゃんの隣に腰掛ける。

「…ごめんね、急に」
「あ、いえ」

すぐに途切れる会話
蝉の声だけが聞こえる

「「、あの」」

重なる声に
ちょっと目を見合わせて軽く笑う

「ごめん、」
「いえ、私こそ」

あー口の中がカラカラだ。
深呼吸をする。

「…Aちゃん、」
「はい、」

ごめん、許して

戸惑うように震えた身体
ぎゅっとAちゃんを抱きしめる

▽

耳元で小さく聞こえる声は少し震えていて
ちょっと力を緩めようとした先輩の腕に反発するように

先輩に抱きついた。

「…先輩、」
「……Aちゃん。俺のこと、好き？」

そうやって、訊ねてくる先輩はずるいと思う。
だって、

「すきっ、です」

そう言うしかないから

「俺、ずっと好きだった」

もう1度力を込められてぽつっと呟かれる

「私のほうが、もっと前から好きでしたっ」

思わず言い返した私に
先輩は驚いたように体を離して私の顔をみて、嬉しそうに頭を撫でる。

「ははっ、ありがとうな。俺を好きになってくれて」

ズルい。ズルすぎる。

「先輩、好きです」
「知ってる」
「先輩は私のこと好きですか」
「うん。好き」
「せんぱ、」
「拓弥、拓弥にして」
「……たく、や」
「うん。よし。」

また抱きしめられる温もりに幸せを感じる。
あの言葉きっとずっと忘れない。

．

恋する乙女よ、嘘をつけ。

．

fin.

#こいうそ_C