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あの日、僕は嘘をついた。
「あー…ここ委員会やってた?」
「あ、はい」
誰もいない放課後。残っているのは委員の仕事で黒板を消していた僕と
先生にプリントを出しに行った北川のかばん。
「Aちゃん、まだいるよね?」
学年章からして1コ上の先輩。今日はたしか卒業式前最後の登校日。
なんとなく。わかった。
「Aちゃんに音楽室にきてって伝えといて。5時までいるって」
…この人、北川のことが好きだって。
わかりましたとだけ伝えるとありがとうと言い残して立ち去る。
どう考えても、勝ち目がない気しかしない。
北川にとって僕はただの同じ委員の人(もしくは佑亮と同じクラスの人)ぐらいで。
でもあの人は北川のこと…“Aちゃん”って呼んでた。てことは相当な仲なワケで…
「あ、北村くん。ありがとう黒板」
「うん」
「なんか、ぼーとしてた?大丈夫?」
軽く笑う笑顔はやっぱり可愛らしくて
「うん、大丈夫」
渡したくないって。
「じゃあ私帰るね」
「うん。ばいばい」
「ばいばい」
……僕は君に嘘をついた。
ただ、小さな嘘のつもりだった。まさか、あの2人があれから会っていないなんて
僕は知らなかった。
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作者名:.C | 作成日時:2017年6月19日 11時