僕達の一等星【紫】 (ページ42)

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蓮くんの言葉が効いたのと彼がそれからずっと傍にいてくれるよりになったからか、パタリと嫌がらせはなくなった。

『わっ！綺麗！』

「それ金星。ここからでも比較的見える星な」

夜、夜勤で一人ぼっちな私を気遣ってか蓮くんは境壁を蹴破って作った穴を通ってよく会いに来てくれた。

星を見るのが好きな蓮くんはいつも望遠鏡を片手に星の見分け方や星座の見つけ方を話してくれた。

そのお返しにと私が神話の話をすれば嬉しそうに聞いてくれて、気が付いたらかけがえのない時間となっていた。

私達が夜中会っているということは絶対双方の親は気付いていた筈なのに、壁の穴が塞がれることなく特に話題にも上がらなかった。思えばあの時交流が絶たれていたら今の私はいないとからありがたく思う。

蓮くんとの秘密の密会は学年が上がっても続き、思春期の独特の距離感になっても私達は変わらずにいれた。

けれど、平穏だった日々がまた荒れることになる。

“お母さんね、再婚したの”

高校進学を考え出した私への母の突然の告白。当然頭が真っ白になった。私への相談は一切なかったし、母が私の方が年齢が近いのでは？と目を疑う若い男の人を連れてきたのだから。

娘としては嬉しそうに微笑む母に祝福の言葉をかけるべきなのだろう。けど、なんだろう、この胸に拭い切れない不愉快感と気持ち悪さは。

“娘ちゃん今何歳？”

『…来年高校生です』

“わっかいなぁ。でも初々しくて可愛いね”

肩に軽く置かれた手、その瞬間ぞわぞわと虫が這うような嫌悪感に母の再婚相手から思いっきり距離を取る。その時の舐めるように動く視線と言葉の裏に隠された下心に、はっきり嫌悪感と拒否反応を抱いた。

自分の夫の機嫌を取るように私を咎める母はなんで目の前の人の本質を見抜けなかったのかと一気に感情が冷めたし、私は『新婚の邪魔をしたくないから』というでまかせの理由で全寮制の高校へと進学することを決意した。

『恋愛をすることは素敵なことだってわかってるんです。けれど、私はあの両親を見てしまってるから前向きに捉えられないようになってしまったんです』

知らず知らずの内に他の女の人と愛し合い家族を捨てた父、娘よりも目の前の男に心酔する母、そんな両親の血が私の中に流れているのならきっと私も同じようなことを犯す。

なら私は一生恋なんてしなくていい、愛なんて知らなくていい。

渦巻くこの感情は呪いだから、一生解けることはないと思ってた。