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バン!と勢い良く開けた扉の音に肩を揺らし、深澤先輩はだらしなく座ってた椅子から転げ落ちた。
「びっ、くりしたー…いきなり人入ってくるとは思わないじゃん…てかあれ?Aちゃん?めめと帰ったんじゃ?」
『深澤先輩、私の話聞いてくれませんか?』
腰を擦りながら立ち上がる深澤先輩は私の言葉を聞いて眼鏡の奥の瞳を溢れ落ちそうな位丸くして、ハッと我に返る。
そりゃそうだ、帰ったと思った人物が爆速で戻ってきていきなり話を聞けと言ってるのだから。
突然すぎる自分の行動と無意識に寄せていた距離感に恥ずかしくなって体を離して視線を足の爪先に落とす。
「…Aちゃん紅茶とカフェオレどっちがいい?」
『え?』
「丁度友達から美味しいケーキ貰ったのよ。二人帰っちゃったからどうしようかなーと悩んでたから良かった良かった。それ食べながらお話しよっか?」
俯いた頭に降ってきた優しい声。弾けるように上げれば目を細めてこちらを見つめてくる深澤先輩。
きゅっ、と甘く柔らかい締め付けが胸を刺激する。ああ、相変わらず優しいな。
「ほいどーぞ」
『ありがとうございます…』
「いえいえ。長話になるでしょ?それ食べ終わってからでもいいし飲み終わってからでもいいし、好きなタイミングで話し出していいから。俺どうせ暇だし」
明るい口調で言いながら丁寧に目の前に置かれた真っ赤なショートケーキとカフェオレ。湯気がたちのぼるそれを一口飲めば甘くてまろやかな味が広がり、またきゅっと締め付けられる。
同じように傾けた深澤先輩は本当に私のタイミングをゆったり待っていて、その優しさと飲み物の温もりで落ち着いた私はゆっくり口を開いた。
『深澤先輩、前に先輩“俺のこと嫌いでしょ?”って私に質問してきたことありますよね。それに私がどう答えたか覚えてますか?』
「“嫌いじゃないけど好きでもない”でしょ?まぁ厳密には俺が発する褒め言葉が嫌だった訳だけどね」
あの時はまだ警戒心しかなかったよねー、とへらりと笑い細めた瞳はそのままに少し真剣な表情をした深澤先輩が続ける。
「それ、今から話すことに重大だったりする?」
『…その通りです』
きゅっ、と自分の手を握りしめ私は紡ぐ。
『私、両親が離婚してるんです。それがきっかけなのか分かりませんけど私…恋愛というものに嫌悪感を抱いてて、それを軽率に行う人には加えて激しい拒否反応があるんです』
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時