僕達の一等星【紫】 (ページ35)

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『私はまだ恋とか愛とか、そういうのがまだあれだけど…でも蓮くんの気持ちには真剣に向き合いたい』

「うん」

『私はまだ自分がどういう恋愛をしたいのかが分からないし時間がかかるかもだけど、近いうちにちゃんと自分の中で答えを出すからそれまで待っててくれますか…？』

これが私が今思ってることであり伝えたいこと。自分本位すぎるし確約がない言葉に蓮くんは幻滅するかもしれないと少しだけ手が震える。

けれど、その手を包み込んで覗き込んできた彼は優しく微笑んでいた。

「何年Aに片想いしてたと思ってんの？それくらい余裕。ゆっくり向き合ってよ、それはきっとAにとって良いことだから」

ああ、やっぱり彼は私の恩人だ。柔く落とされた裏のない言葉に心がスッと軽くなるのが分かったし頬に添えられた手のひらの温もりに安心してる自分がいる。

穏やかで緩やかな気持ち。これがもしかしたら恋する気持ち、なのかな。

「というかいきなり部屋来るからビビったんだけど」

『実は深澤先輩に背中を押されまして、』

労るように頬を撫でられながらいつもの調子に戻った蓮くんに大まかなことを説明した。

本当に深澤先輩のおかげかもしれない、とパワーを送って貰った右手に視線を落とす。叩いた衝撃がまだ残ってるのかじんじんと痛いけどそれとは違った熱を持ってるような。

ぐい！とそれを遮断するように両頬を包み持ち上げられ、じっと私の瞳の奥まで覗こうとする蓮くんとの距離に心臓が跳ね上がる。

『えっーと…蓮くん？どうしたの？』

動揺してる心中を悟られないように平然を装いながら距離を取ろうとその手をほどこうとした瞬間右手首を掴まれ、手のひらに口を寄せる。

スローモーションのように感じた時間は柔らかく熱い唇と懇願するような瞳が私を見上げてきて現実に戻されて、

『ひぇぇえ！？？』

「なにそのリアクション」

そこに留まったまま私の反応を見て笑うから吐息がかかりくすぐったい。離して欲しい、と視線で訴えるも見つめ返されたその視線の甘さと熱さに溶けてなくなってしまう。

「俺が伝え続ければAの中で早く答えが見つかるかもしれないし今回の事でやっぱり俺はAが好きなんだなって思った。だからこれからはもっとアピールしていくから覚悟してて」

そう嬉しそうに言った彼はもう一度手のひらに唇を寄せた後、手の甲にも優しく一つキスを落とした。