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「それこそ神話のように両親がもっと感情的になってお互いの想いをぶつけ合ったりしてたら、もっと違う結末を迎えてたかもしれないなってたまに思うんだよね」
夜空から降ってくる星達を眺めながら話す深澤先輩の声は柔らかく、慈愛に満ちた目をしていてとくりと心臓が一つ音を立てた。
「でもさ、愛とか恋とかって結局人それぞれなんだなって思うんだよね」
『…いきなりざっくりしましたね』
「だって燃えるような恋をする人もいれば穏やかな愛を育む人もいるし勿論逆もあると思うよ。でもそんなの当事者になってみないと分からないんだからさ、別に今はそんな深く考えなくていいんじゃない?ってこと」
けらけらと笑い声が響くけど表情は真剣で、私の曖昧な呟きにもしっかり向き合ってくれてる深澤先輩がとても嬉しかった。
「俺言ったでしょ?言葉にしないと伝わらないこともあるって。だからとりあえず今思ってる気持ちをめめに伝えてみたら?」
『でも私避けられてるかもしれなくて、』
「そんなの家に突撃しなさいよ」
『避けられてるのにですか?』
「そんなこと気にしてたらいつまでたってもめめと話せないよ?めめは勇気出したんだからAちゃんもそれ相応の覚悟でいかないと」
少し強めな口調になってるのは躊躇ってる私を鼓舞してくれてるから。若干癪に触るけどド正論だし、私もこのままではいけないと思ってたから丁度いい。
椅子から腰を上げた私に「行くの?」と上目遣いをしてきた深澤先輩。少し寂しげな色合いに一瞬動きが止まったが思い立ったが吉日、頷く。
「じゃあ頼りがい溢れる先輩が勇気が出るおまじないしてあげる」
『キャンセル出来ますそれ?』
「おぉい!先輩の厚意を断るな!!!」
同じく立ち上がった深澤先輩が私の右手を両手で包み込む。私より色白で男らしい手にすっぽり覆われて心臓が跳ね上がった。
何かを送り込むようにぎゅっと握られながら深澤先輩は口を開く。
「俺の勇気をAちゃんにあげる」
『先輩が勇気使う機会とかあるんですか?』
「失礼な!そりゃあるよ、まだ出番がないだけ」
「頑張れ」と微笑まれながら離れた手に名残惜しさを感じたのは今私がとても不安だからだ、きっと。だからそれを振り切るように深澤先輩に頭を下げ、駆け足で目的地へと向かった。
「……あーあ、早く俺のことも意識してくれないかねぇ」
そう呟いた深澤先輩の声は勢いよく閉まった扉の音で、私に届くことはなかった。
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時