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深澤先輩の自宅へ下ろした後、車を貸してくれた蓮くんのお友達の元へ。
ギリギリどこも擦らなかったし使った分のガソリンも補充して返せば小粋な関西弁で怒涛のようにお礼を言われた。それを言うならこちらなんだけどな。
同じくらい頭を下げて「もう暗いから目黒に送って貰って」という深澤先輩と「夜遅いし荷物もあるし送る」という蓮くんの双方からの圧により大人しく部屋までの帰路を歩く。
『後は一人で出来るしここまででいいよ、ありがとう蓮くん』
玄関先までついてきてくれた蓮くんにそう声をかける。終始無言だったしお疲れなのだろうと持ってくれてた荷物を受け取ろうと手を伸ばす。
けど次の瞬間私の手首を男らしい手が包み込む。驚きながら見上げた先の表情は真剣で、
「ごめん。本当は言うつもりなかったんだけど…やっぱり俺余裕ないわ。だから改めて言わせて」
絡まった視線に深い海のような瞳は私をその中で溺れさせようとしてくる。少し屈んだ蓮くんと距離が縮まり、緊張を纏いながら蕩けた声を私に振り注ぐ。
「好き。ずっと好きだった。その笑顔も声も、Aもその気持ちもずっと傍で見てきたから…これからも俺が守りたい」
蓮くんは掴んでいた手をゆっくり引いて私を自分の中に閉じ込めた。壊れ物を扱うような、でも離したくないと言いたげに背中に腕を回す。
好きだよ、と繰り返されたその言葉は耳元で反響し頭がこんがらがってからからと声が乾く。
『れ、蓮くん、』
「ごめん。もうちょいこのままでいさせて」
なんとか絞り出すも懇願にかき消され「混乱させてごめん」と溢しながらも離してくれない熱い腕と覗き込んでくる甘さをふんだんに含んだ眼差しに、キャパシティが限界に達した。
ふわりと力が抜けた私をゆっくり座らせながら少し距離を離した蓮くんだったけど、視線は外すことを許してくれない。
「Aが俺を異性として意識してくれるのは感じてたけど、それじゃ足りない。もっと俺のこと意識してよ。
俺はAが他の奴と親しげにしてるだけで、気が気じゃない」
いつの間にか背中から腰に回していた腕、空いた方の手を私の頬に滑らせる。ひんやりと冷たく感じるのはきっと私の頬が熱すぎるから。
『ま、まって蓮く、』
「待たない。好きだ、A」
熱を含んだ瞳がスッと細くなる。少し顔を傾けて近付いてきたその表情があまりにも甘美的で。
この時初めて、私は彼にどれだけ想われていたのかを実感した。
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時