僕達の一等星【紫】 (ページ24)

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目的地は森の中に突如現れた更地だった。

「元々ここにもコテージ建てる予定だったんだけど資金的な面で保留になってるんだって」と説明してくれたけど、先輩はなんで内部事情まで知ってるのか…。

木々に囲まれ無駄な光は全くなく、そのお陰で見上げた先は満天の星空。次々と放物線が落ちてくるのが目視出来て思わず感嘆の声が漏れる。

『わっ…すっごい綺麗…』

「極大まではもう少しかな。それまで他の星の観測と写真撮影の準備しておこうか」

今回の目的は流星群観測の他に星空の写真も撮ることも入っている。その為に新しく機材を買ったのだ。

『望遠鏡に付ければ撮れるんですよね？』

「そうそう。その機材なら目黒の持ってる鞄の中にあると思うけど」

「えっーと………やべ。コテージに忘れてきたかも」

鞄を漁る蓮くんの悔しそうな声に望遠鏡の組み立てを手伝っていた手を止めて目を向けた。ため息をつきながら少し気だるそうに立ち上がった蓮くんは取ってきます、と言った。

『大丈夫？私行こうか？』

「駄目。逆にAに行かせたら心配で気が気じゃないからここにいて」

「目黒悪いな。あとついでに何個か頼んでもいいか？」

珍しく嫌そうにしてたから声をかけたのに秒で却下された。まぁいいかと二人の会話を流しながら再度星空を見上げた。

自宅やキャンパス内で観測はしていたけどここまでの星空は初めてで…なんて壮観なんだろう。星が降ってくるという表現がまさしく当てはまる。

夢中になっていた私の肩にふわりと何かかかった気配がして首を戻せば見覚えのある上着。

「真夏の夜とはいえ森の中だしもうちょい冷え込むだろうから羽織っておいた方がいいよ」

『先輩は？』

「俺は平気、男だしこれくらいはね。女の子は体冷やしちゃ駄目でしょ？めめに追加で羽織れる何か頼んだからそれまで俺ので悪いけど我慢してて」

ついではそれを意味してたのか、と笑った先輩にお礼を言えば照れたように目を細めた。

望遠鏡の設営を手伝っていると甘いけどしつこくない香りが上着から薫ってきて心臓が忙しなく動く。それにたまにこちらを見る先輩の目の色に既視感を感じて落ち着かない。

どこで見たっけ…そうだ、確かその目は、

「よし設営終わり。あとはめめを待つだけだから…Aちゃん、ちょっと俺とお話ししようか？」

そう微笑んだ先輩を直視出来なかったのはその目が蓮くんのと同じだと気付いてしまったから。