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着いたコテージで「観測まで自由時間ね」と言われたが運転していた疲れが睡魔に変わり、あ駄目だ、寝る。
するとコンコン、と控えめに扉がノックされた。
「あ〜やっぱり眠そうだねぇ。そんなAちゃんに良いもの持ってきたんだけど、いる?」
廊下から顔を覗かせた先輩は私を見てふんわり笑った後、手に持っていたものを掲げた。中身を聞けば蜂蜜入りのホットミルクだそう。
『飲んだら確実に寝ますよわたし…』
「Aちゃん夜遅くまで起きてるの苦手なんでしょ?運転してた疲れもあると思うし今のうちに仮眠取っておいた方がいいと俺は思うなー」
今の状態を全部見抜かれ、更に少し前に蓮くんが溢した話を覚えていて話す先輩に驚いて半分眠気が飛んだ。
部屋に入ってきた先輩の手には自身の分もあってその辺の抜かりがないのが流石すぎた。
「はいこれ。そこまで熱くはないと思うけど気を付けて飲んでね?」
『ありがとうございます…あれ、蓮くんは?』
「めめなら散歩してくるって」
姿が見えない彼の行方を聞けばマグカップを傾けながら教えてくれた。
あー…確かにこんな大自然見て蓮くんが大人しくしてるはずがない。うきうきしながら外に出ていったのが安易に想像できる。
なんて考えながらマグカップを傾ければ思ってたより中身が熱くて一回離した。
「ほらーだから気を付けてって言ったじゃん。めめのこと考えすぎだよ」
『えっ…なんで』
またしても見抜かれたことを驚いていれば憂いを帯びた声色と眼鏡の奥の寂しそうな三日月と目があってきゅ、と心臓が動く。
それまで少し距離を取っていた先輩がゆっくりベッドに腰掛けていた私の方に歩み寄り同じように腰掛ける。
頬に添えられた手のひらで向かされ至近距離で視線が絡み合う。揺れた瞳は何か言いたげで、それを読み解く前に隠すように離れた手のひらで頭を撫でられた。
「Aちゃんもう目が開いてないよ?一回寝よっか。今なら俺の膝枕と昔話つけてあげるね」
『え、いや大丈夫で、』
と拒否する前に手からマグカップを奪われゆっくり誘導されて先輩の膝の上に頭が乗る。
近くにあったタオルケットを引き寄せその上から一定のリズムで体を優しく叩かれれば子供を寝かし付けるようで、悔しいけど、とても心地がいい。
再度うとうとしてきた私を見下ろす視線は温かくて、安心しきった私はさっきの言葉をはぐらかされたことに気付いていなかった。
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時