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部活終わりの恒例のファミレス。ドリンクバーから持ってきた炭酸をしかめっ面で飲んでいた私にポテトを摘まんだ彼が口を開いた。
「薄々思ってたけどAってふっかさんのこと、」
『苦手です』
食い気味に放った私を見て苦笑いをした彼がまぁ食え、と皿を差し出してきたので遠慮なく貰う。
頬張ったポテトは熱々出来立てで、お陰でちょっと眉間が和らいだ。
『人として尊敬できる所はあるけど、それを上回るあの陽キャ感がどうも苦手』
「あー…まぁあの人俺が知り合った時からああだからなぁ…」
『あと女の人の扱い慣れてる所。呼吸するように可愛いとか言うじゃん、怖い』
弁解の余地がないと天井を見上げた蓮くんの髪がさらりと動いた。
噂の人物は今日も今日とて「Aちゃんそれ新しい服?可愛いね」なんて言ったと思ったら「今日合コンだから!お先!」と自分から召集したくせに一番始めに帰っていった。軽い、軽すぎでしょ。
ずきんと痛む古傷には気付かないふりをして届いたコーンバターをスプーンで掬う。
『勿論自分が嫉妬を持って言ってることも分かってる。でもそれくらい許して欲しい…それを前提にしても苦手なんだから…嫌よ嫌よも好きのうちじゃない、嫌なものは嫌です』
「いやよ……?」
私の言葉にはてなマークを浮かべる彼を一回無視してスプーンを口に目一杯含んだ。未だに言葉の意味を理解できてない彼を見つめ返して、掬いながら会話を再開した。
『口では嫌だとか言ってるけど本心は好きって事でしょ?って意味だよ』
「なるほどね。でもそれってあながち間違いじゃないじゃん。Aは人としてふっかさんは尊敬してるってついさっき言ってたばかりじゃん」
『蓮くん本当鋭いところ突くよね』
「それにお前ももう大学生なんだからそんな露骨に顔に出すなって。あの人に世話になってるのは本当なんだしさ」
思ってることがすぐ顔に出る私を一番身近で見てきて一番早く気付く蓮くんだからこその的確なアドバイス。
「関わっていけば良い人だって分かってくるし、もしなんかあったら俺が助けるからそんないじけるなよ」
『…ごめんね、元々蓮くんの先輩なのにこんなボロボロに言って』
「別に。Aがそう思うのも納得できるし事実だし。それにAだからな」
急に申し訳なくなって謝れば気にするなと言いたげに優しく笑い、私の手からスプーンを奪い私の目の前の皿の中身を掬った。
君の優しさは相変わらずだね。
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時