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玄関の扉と壁の少しの隙間を器用に通り部屋に上がり込む長身はそのままベッドに倒れ込んだ。
連絡もなしに突然訪問してきたことにも驚いたけど、傍に座った私の気配を確認してからもそりと上げた前髪越しの瞳が拗ねていて目を丸くした。
「テスト期間中、俺のいない所でふっかさんと二人で会ってたらしいじゃん」
『…それ誰から聞いたの?』
「本人から自慢げに聞いた」
『あの人…』
別に隠してた訳じゃないけど言う程の事でもないなと思ってたのに。恨み言のように呟けば彼は綺麗な眉をひそめた。
彼は私と違って友達が多い。けれど彼は何かと私の傍にいるから彼のお友達からあまりよく思われてないのは伝わってきた。
二つのことを同時に出来ない彼だから私のことを心配して日常生活の多くを割いてくれているのは分かってた。
だからせめて勉強会だと称して誘われる今の時期くらい私のことを気にして欲しくなくて、会うのを避けていた。
『先輩と会ってたのはレポートとかテスト対策手伝って貰ってただけだから。蓮くんはお友達と勉強会だったしそれに声掛けるのもお邪魔かなぁと思って』
「ねぇ、俺がいつAのこと邪魔だって言った?昔も今も俺がAにそんなこと言ったことあった?」
『言ってはないけど、』
「俺はAの傍にいるのが一番好きだから一緒にいるのにそんな風に思われてたなんて嫌なんだけど。Aはもっと俺に大切にされてるって自覚して」
遮った語気の強い彼は叱っているようでさっきから逸らされない瞳は寂しさと優しさを含んでいて。
ああこれ、先輩が言ってた“一人で抱え込みがち”ってやつにも通ずるのかななんて感じて嬉しさと申し訳さでいっぱいになった。
『ごめんね、蓮くんがそこまで私を思ってくれてるの知らなかったから』
「…伝わってない?」
『伝わりすぎてる。これは私の悪いところ…らしいから頑張って直すね』
「まぁいいよ。そう思わないように俺が伝え続けていけばいい話だし」
よっと起き上がった彼はどうやら機嫌が直ったらしい。ほっと胸を撫で下ろしていたらテレビをつけた彼が何気ない口調で爆弾を落とした。
「という訳で俺今日ここ泊まるから」
『…わんもあ?』
「俺を放ってふっかさんと仲良くしてたのはまだ許してないし俺がどんだけAと居ることが大切か教えてあげる」
に、と笑った彼の手は定額サービスの映画を漁り出して、どうやら本気らしくて違う意味でまたいっぱいになった。
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作者名:スピカ | 作成日時:2022年3月16日 22時