僕達の一等星【紫】 (ページ1)

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授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、座っていた生徒はぞろぞろと動き出す。

使っていた教材を鞄に仕舞い講義室から部室とは反対の方向に歩こうとしたら、後ろからぽんと肩を叩かれた。

『げ、蓮くん』

「迎えにきた。一緒に部室行こ、A」

私に次の言葉を吐かせず、はい行くよ～と手首を掴まれて引きずられるように部室棟へ連行された。

マンションの部屋が隣同士で、小学校中学校と同じ。高校は離れたけど大学でまた同じになった彼とは所謂“幼なじみ”という付き合い。

だからというのか、お互いどういう行動をするのかみたいなのはもう見抜かれてしまっている。

すがりつくように目線をあげた先には昔から変わらない彼特有の特徴的な髪。

大学入学をきっかけに黒から明るく染められ少し崩された髪型になったものの前のも今のも似合っていて、彼の端正な顔立ちを際立たせている。

『見逃してくれない？私今日気分じゃないの』

「それ毎回聞いてる。その言い訳だと永遠に気分乗らなくて部室来ないじゃん」

『だって、』

「まぁ言いたいことは分かるけどさ、俺いるし何があったら無視でも俺に助け求めてくれて良いから」

壊れ物を扱うように私の手首を握るすらりとした指、形の良い唇から紡がれる深く柔い声と真っ直ぐ前を向く宝石のような瞳は全て私を気遣っているから反論を諦めた。

俯けば身長の高い彼に見合った細い手足が目に写り、歩くだけでその道がランウェイのように見えた。

好奇、好意、嫉妬…様々な視線を色んな所から感じるけど、この人は気付いていないのか気にしてないのか自分のペースで歩く。

それが私には心地よくて、かっこよく写る。

「なに？そんな見てきて」

『いや、蓮くんと一緒の大学で良かったなぁと思いまして噛み締めてた』

「……上手いこと言っても逃がさないからな」

『本心なんだけどなぁ』

本心をそのまま言えばあっそ、と素っ気ない返しがきたが耳がほんのり赤くなってるのがわかった。

いつの間にか着いていた“天文研究会”。もう元に戻った彼が扉を開ければ八畳ほどの部屋の中、椅子に腰掛けていた人物が私達に気が付いて起き上がった。

「あ～やっときた！遅いぞお前ら～」

にへらと笑うこの人、深澤先輩。この天文研究会の長であり、蓮くんの高校の先輩であり、私達の学部の先輩であり、私の頭の痛い原因の人で、

……そう、私はこの先輩が苦手なのだ。