17話 ページ18
ー大sideー
口調はいつもより柔らかいし、普段と違い化粧もしているせいか頬も赤い。
本当、調子狂うな。
Aの足の様子を見ていれば俺の頭に彼女の手が触れる。
視線を上に向ければ泣きそうな顔をしているA。
「このままさ、翼が一緒に行動できないのが当たり前になってくのかな…？そんで…大もいつかは…」
大「俺は彼女とか作んねーから」
「でも…」
大「約束する。もしも、翼が違う誰かとの時間を優先したとしても俺だけはお前の傍にいてやるよ」
「大…私、」
寂しい…言葉には出さなかったが彼女の顔がそれを物語っていた。
何かを言おうとしたAの髪をくしゃくしゃ撫でる。
大「だから心配すんな。ほら、おんぶしてやるから帰るぞ」
「じ、自分で…」
大「そんな痛そうな足してるAを歩かせたら俺が怒られる」
Aの前に屈んで早く乗るように急かせば大人しく体を預けてきたので、彼女をおんぶして家までの帰り道を歩き始める。
大「言ってなかったけど、浴衣似合ってて正直超驚いた」
「あ、ありがと…」
大「来年も着るのか？」
「んー…わかんない。また足痛めるなら着ないかもー」
大「じゃあ今日はすげーレアなもん見たってことか。ラッキーだったな」
恥ずかしいのかAは無言になり、少しの間沈黙が流れる。
翼がいればひっきりなしに会話が飛び交っているんだろうと思考を巡らせればAが口を開いた。
「大…あのね、私…今の関係が、すごくすごく居心地良くて壊したくない。それほど好きだ」
大「俺も好きだよ。ホントはさ、Aと同じ学年だったらな…って、思ったこともある」
「そうなの？」
大「ああ。お前達は一緒に卒業出来るけど、俺はあと一年あるだろ？その一年間は退屈で仕方ねーんだ」
ポツリと本音を漏らせばAは笑いながら俺の首元に回している腕に少しだけ力を込めた。
「可愛いこと言いやがって！マジで弟になってほしい！！」
大「いや、それはちょっと…」
「なんでよー」
大「こんなちんちくりんの姉はヤダ。なるなら兄貴だな」
俺達は冗談を言い合いながら帰路に着いた。
普段着に着替え直した彼女を家に送り届け、祭りの時にこっそり撮っていた浴衣姿のAの写真を眺める。
翼に送るべきか悩んだが…この姿のAを見せるのがなんとなく嫌だったので送るのはやめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るーこ | 作成日時：2018年12月26日 19時
