百八十八。戻ってこい【智】 ページ8
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子供の頃から長い間、ずっと一緒に過ごしてきたけど
こんな距離感は、これが初めてだった。
不意に柔らかい腕に抱き止められて、重なった胸から伝わる鼓動が
まるで嘘のように、夢の中のように感じる
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『智くんの中から出ていけなんて、言わないで＿＿＿』
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そう言って俺の頭を包み込むAの腕に力が入る
こいつは本当に、なんにもわかっちゃいない
俺とお前は、男と女なんだよ
俺が自分の思いを制御して初めて、その事実を抑え込んでいることを
お前の腕の中から香る甘い香りが、柔らかい肌が
俺とお前がただの男と女でしかないって物語ってることを
こいつは、なんにもわかってない
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『お願い。私を、ゆるして…』
これを皮切りに、箍が外れたようにAはまた泣き出す。
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あーあ。何やってんだろ…俺。
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しばらくそのまま時間が過ぎて
少しずつその嗚咽が落ち着き始めたところで、Aの頭にそっと手を乗せた。
「…俺。お前のメシが、いちばん好きなんだよ」
『…』
「言っただろ？お前の牡蠣フライが一番だって」
『…』
「そうやって、お前のメシを楽しみにしてる奴が」
『…』
「俺の他にも、いっぱいいる」
『…』
「地元のみんなも、あの店で出会った他の客も。…櫻井だって、そうなんだろ」
俺が櫻井の名前を出して、Aがピクッと反応する
「お前のメシで救われてる奴が、既にいっぱいいる」
『…』
「その事実だけで、十分なんじゃねえの？」
『…』
「それを投げ出して、ここで過ごすことが」
『…』
「本当に、今お前がやるべきことなの？」
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なぁ、いい加減わかってるんだろ。
いつまでもここにいたところで
お前がぶつかった壁の、本当の答えなんか出ないってこと。
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「…戻ってこいよ」
『…』
「みんな、待ってるから」
そう言って、Aを抱きしめ直す。
「お前の本当の居場所に、戻ってこい」
すると、彼女もそれに応えるように俺を抱きしめ返した。
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はあ…
なんの拷問なの？これ。
俺にとっても同じ
誰より特別なこの存在を、この腕に抱きしめながら
間抜けにそんなことを思って、心の中で項垂れる。
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『…ありがとう、智くん』
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そうしてようやく身体を離せば、やっと彼女の笑顔が見えた。
しゃーねーな
もうちょっと、お前の幼馴染
続けてやるか。
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miihoo(プロフ) - こんにちは 以前コメントさせて頂いた者です。また読み返してみました。お仕事お忙しいのでしょうね。気長に更新待ってます。大好きなお話なので。 (2022年6月12日 18時) (
レス) @page9 id: 1ac01d1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めてコメさせていただきます。智くん担の私としては…やっばり智くんと結ばれて欲しかった。こんなにも主人公ちゃんを心から想っている智くんの気持ちが切ない😭 (2021年10月16日 11時) (レス) @page9 id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年10月10日 15時
