百八十四。宿 ページ4
『やっぱ、Aの牡蠣フライが一番だな』
突然、一人で金沢までやってきた智くん。
いつもと変わらない笑顔でそう言って、私が作った牡蠣フライを頬張る。
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きっと…気にかけて、わざわざ来てくれたんだろうな、と思う。
少しの期間、会うことが無かっただけなのに
すごく懐かしく感じて…多くは語らなくとも、彼の存在は相変わらず私をホッとさせた。
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『そういやお前。今晩の宿、とってあんの？』
智くんとカウンター越しに談笑を続けていた昌宏さんが、不意にそう問いかける。
『やっべ。忘れてた』
そう気が付いた智くんが急に慌て出した。
『なんで忘れんだよ(笑)待ってな、お袋にうちの旅館の空きがあるか聞いてみるわ』
『あ、なるほど。悪いね松兄、ありがと』
そうして電話の子機を手に取った昌宏さんに『ごめんA、刺し代わってくれる？』と言われ、昌宏さんの代わりにカウンターに立った。
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『いつまでこっちにいるか、決めてんの？』
車海老の下処理の続きに取り掛かろうとしたところで、智くんにそう声を掛けられる。
「あ…うん、まだもうちょっとお世話になるつもり」
“いつまで” という問いに対して明言を避けた私に
智くんは『そっか』とだけ言って、それ以上追求することは無かった。
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『お待たせ。旅館は埋まってるけど、うちの客間なら余ってるってさ』
『ちょうどAの隣が空いてるらしいから、今晩そこ使いな』
“隣” という言葉に少々ピクッとした智くんが
『や…悪いから良いよ、今日だけだしそのへんテキトーに探すから』と遠慮したけど
『気にすんなって。お袋、智に会うの久々だって喜んでたし』
『そういうことだからA、キリのいいとこで切り上げて智も連れて帰ってやって』
昌宏さんがここまで言えば
『じゃあ、お言葉に甘えて』と言って、智くんは身支度を始めた。
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『まあ〜智くん！いらっしゃい、久しぶりねえ。Aちゃんもお疲れ様』
そうして智くんと一緒に松岡家に帰宅して、慶子さんに笑顔で出迎えられる。
『お風呂は1階の居間の先、旅館と違って小さいけど男湯と女湯でちゃんと分かれてるから』
『お部屋は3階ね。Aちゃん、智くんのこと隣の客間まで案内してあげてね』
慶子さんにそう促されて
お手洗いの場所なども含めて案内して回ると、彼は感心しきりだった。
『立派な家だな〜本家の旅館と何が違うの？(笑)』
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miihoo(プロフ) - こんにちは 以前コメントさせて頂いた者です。また読み返してみました。お仕事お忙しいのでしょうね。気長に更新待ってます。大好きなお話なので。 (2022年6月12日 18時) (
レス) @page9 id: 1ac01d1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めてコメさせていただきます。智くん担の私としては…やっばり智くんと結ばれて欲しかった。こんなにも主人公ちゃんを心から想っている智くんの気持ちが切ない😭 (2021年10月16日 11時) (レス) @page9 id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年10月10日 15時
