百七十九。ちゃんと聞くから【麻】 ページ29
「俺が卸してる、って？」
『ああ、俺んち水産業なの。そこの築地市場が職場』
なるほど、そういうこと。
『たまに漁にも出るし、趣味では釣りもする』
へぇ…
彼の季節外れに日に焼けた肌の理由は、それ故かな。
.
『さっきの話からすると』
『夏に俺が見かけた時は、こっちに帰ってきたばっかってことか』
“俺が見かけた時”＿＿＿？
その彼の言葉を聞いて疑問に思う顔を隠せずいると、それを察するようにこう続ける。
『櫻井と2人で銀座にいただろ。抱き合ってるとこ、見た』
抱き合ってるところ？
銀座…
『Aの店で会った時。どっかで見かけたな…と思って』
『この間、やっと思い出したわ』
“…ねえ。最後に一つだけ、良い？”
“うん、どうした？”
仕事復帰した時の歓迎会
＿＿＿＿あの、銀座の夜だ
そう確信した瞬間、苦い顔で「あ…」と声が漏れた私に、大野さんが怪訝な表情を浮かべてこう言った。
『…そもそも。それがキッカケで今日みたいな時間作ってんだけどね』
“櫻井と、どういう関係？”
『櫻井は何もないって俺に言ってたけど。合ってんの？』
“俺は、もう前に進んでる。お前にも、前に進んで欲しい”
もう幾度とそう告げられたのに
どうして私は…こんなにも、諦められないんだろう
『俺が絶対に許せないのはさ』
『Aを他の女と天秤にかけられること』
『そんな不誠実な付き合い方するんなら、櫻井にAは渡せない……っておい、大丈夫かよ』
そう言う大野さんに肩を揺すられて初めて、自分の目から大粒の涙が溢れていることに気付く
『ちょっと大将、ティッシュかなんか頂戴』
ダメだ…堪えようにも、溢れ出て止まらない。
『え！？智、何泣かしてんだよ〜！』
慌てる2人から差し出されたティッシュで涙を拭いながら、振り絞って思いを言葉にする＿＿＿
.
「…ッ、あの夜は…私が悪いんです、ッ」
「これで最後にするから、って」
「最後に…ッ、もう一度だけ抱きしめて、って…私が、…」
そう必死に言葉を続けようとする私の背中に
ついに大野さんの手のひらがそっと触れて、遠慮がちに上下に撫でる
『…ごめん』
『ゆっくりで良いから。…ちゃんと聞くから』
.
きっと、彼には全て話すべきだ。
ここまでの経緯でついにそう悟った私は
少しずつ、順を追って
翔との出会いから、今に至るまでの全てを
包み隠さず、彼に話した。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
