百七十七。立ち話【智】 ページ27
どっかで、会った気がする_______
どうしてもそう思えて仕方ない俺は、過去の記憶を必死に手繰り寄せる
すると、ある夏の夜の出来事が蘇った。
“キミが見たのは、僕の同僚でね”
“好意を伝えられたけど、キチンとお断りしたところで”
“不意を突かれて、抱き着かれてしまった”
“ 確かにあれは、浅はかな行動だったと思います”
そうだ。あの時の_________
『ご親切にありがとうございました。では…失礼します』
そう礼を述べて去っていこうとした彼女の腕を「待って！」と掴んで、思わず引き止める
突然俺に腕を掴まれた彼女は、当然ながら困惑した表情を浮かべて俺の手を離そうとするけど
それに構うことなくこう訊いた。
「櫻井と、どういう関係？」
突拍子にそう尋ねた瞬間
彼女は分かりやすく目を見開いて、腕を掴む俺の手を制するのをやめた。
「俺、大野智って言います」
俺がそう名乗ると、彼女がピクッと反応する。
「代官山の、“こころ” って店の店主の…幼馴染」
ここまで説明して、俺は彼女の腕を掴む手を離した。
そうして、そのまま彼女の顔色を窺っていると
さっきまでの驚いた表情から、段々と冷静になっていくのが読み取れる。
『…私があのお店を訪ねた日。入れ替わりに出て行かれた方ですね』
…あの時の、櫻井の弁解からすると
彼女は、櫻井に好意があるってことになる。
『翔のことも…ご存知なんですね』
“翔”
ただの同僚にしちゃ、距離の近い呼び方。
「そりゃね。Aの、オトコだから」
彼女の出方を確かめるようにそう言ってみると、何か思い詰めるような表情をしたから
自分で言っておきながら、なんだか罪悪感に苛まれた。
「まあ、こんなとこで立ち話もなんだし」
「ちょっと、時間ある？」
出会ったばかりの彼女に、気付けば俺は思わずそう口にしていた。
『あ…ごめんなさい。今、仕事中ですぐに会社に戻らないといけなくて』
あぁ、そりゃそーか。
依然その華奢な両腕に抱えられたファイルの山を見て、そう思い直す。
「迷惑じゃなければ、ケータイ出して。俺の番号打つから」
そう言うと、一瞬考え込むようにした彼女だけど
その次の瞬間にはすぐにバッグからケータイを取り出して、俺に差し出した。
今考えると。
なぜ、彼女はAの店を訪ねたんだろう。
「今くらいの時間に電話くれたらだいたい出れるから」
「また、日を改めて」
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
