百七十五。夢の中で ページ25
休業に入ることを事前に連絡したのは、食材の卸先などの取引先と、長年のご贔屓筋のみ。
その中には、海産物を卸してくれている智くんのところ、大野水産も当然含まれる。
取引先には電話連絡を入れ、ご贔屓筋には葉書を出した。
.
『え、休業？なんで？』
電話越しでの、智くんの予想通りのリアクション
「久しぶりにまた料理の勉強がしたくなって…少ししたらまた開けるから、連絡するね」
智くんは、こんな簡易的な説明だけじゃすんなり納得してくれないかもしれない
そう思ったけど『ふーん、そう…じゃあ親父とじーちゃんにも伝えとくわ』と、予想より簡潔にやり取りを終えられそうで、ホッと胸を撫で下ろす。
『勉強って、また松岡さんのところで？』
以前の修行中、智くんは何度か金沢まで食事しにきてくれたことがあった。
「あ…うん、そう」
身近な人には行き先を告げないでおこう
そう思っていたけど、智くん相手に変に濁したら逆に勘繰られそうだし、あまり深掘りされるときっと言葉に詰まる
そう考えて、ここでは素直に認めた。
.
「なんて連絡しようか…」
もう一度、翔さんからのメールの文面を見つめて、此方の出方を考える。
“具合が悪い、とかじゃなければ良いけど…”
確かにあの張り紙一つじゃ、そう危惧するのもおかしくない
やっぱり…行き先は伝えないにしても、休業の旨くらいは翔さんに連絡しておくべきだった。
でも、彼の声を聞いてしまったら…自分に負けそうで、電話をかけ直すことは躊躇われる
考えた結果…メールの返信を打つことにした。
“休業のこと、連絡せずごめんなさい。
身体は何ともないので心配しないでね。
かなり冷えてきたので、翔さんも体調には気をつけて”
送信ボタンを押してケータイを閉じたら
慶子さんが用意してくれた、温かいお布団の中に潜り込む。
間もなく年の瀬、師走を迎える中
金沢の冷え込みも厳しくなってきて、そんな肌寒さは人恋しさに拍車をかける。
“ 大丈夫。少しの間うちで過ごせば、全部克服できるよ”
私には、料理しかない。料理で、人に認めてもらうしかないんだ。
その思い一つで、またこの松玄邸へ飛び込んだ。
今はとにかく、料理に没頭したい
ここへ来て…毎晩のように夢の中で翔さんに会う
今夜も会えるだろうか？
“俺のそばに戻ってきてくれるって…信じてて良いんだよね？”
そんな淡い期待を抱いて…そっと瞳を閉じる。
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
