百六十六。大きな間違い ページ16
『本当にごめん…傷付けて、ほんとに…』
大好きなその腕に抱き締められると、つい決心が揺らぎそうになる。
だけど…なんとか奮い立たせて、今すぐにでもその胸に甘えたいと叫ぶ心に目を瞑って、翔さんの腕をそっと解いた。
「見つめ直す時間がほしいの」
彼の胸を離れて行き場をなくした自分の両手を膝に置いて、それを見つめるように俯くと
その私の両手を、彼の大きな左手が覆い隠すように包み込む。
少しでも触れていると…翔さんを好きで堪らない本心に負けそうで。
包み込んでくれるその手を払い除けようと試みるけど、そうはさせまいと言うように、彼の力は益々強くなる。
「昨晩…翔さんから麻里奈さんの香りがした瞬間」
俯いたままそう言葉にしたら
彼が私の顎に手を添えて持ち上げ、見上げた視線が静かに絡む
「翔さんの気持ちは、私から離れ始めてしまったのかなって…」
“翔に近付かないで”
「もしかしたら私は、2人の障害に『それは違う』」
私の言葉を強い口調で遮った翔さんが、射抜くように私を見つめる
『確かに昨晩、アイツに不意をつかれた。ごめん…俺の不注意だった』
そう言うと真っ直ぐこちらを見ていた視線を一瞬だけ落として、すぐにもう一度視線を合わせる
『言っただろ。もう、終わったことだから。俺にはAだけだって』
『俺はもう、A以外考えられない。この先何があっても』
本当にそう言い切れる？
麻里奈さんと再会した今も、本当に私が良いと言える？
「…麻里奈さんに私の姿が不甲斐なく見えたのなら」
私が言葉を発する度、私の手を握る翔さんの力がどんどん強くなっていく
「気持ちに蓋をして諦めようとした人の、そのパートナーが私だということを、受け止められないのは当然だなと思う」
翔さんは、本当に素敵な人。
私には勿体なさすぎるくらい。
そのうえ教養もあって、社会でもしっかり己の道を歩んで、努力だけではなく成果を残してきた人。
そんな人の隣に、私は本当に相応しいのだろうか？
“水商売”
この言葉が、今の自分の姿を客観視するきっかけだった。
今の実力に、今の自分に、満足していたなら…それは傲慢で、大きな間違いなのだと。
「だから…今のままなら、私は私を自分で許せない」
「あなたの隣に、胸を張って立てる私になりたいの」
その為には
一度、あなたのそばを離れないといけない。
そうしなければきっと、
この甘えた心を鍛え直せないから________
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ゆり:)(プロフ) - このお話が大好きで再開してくださり、とても嬉しいです。取材を受けられるなんてすごいですね！お店に行ってみたいです！ (2021年10月5日 20時) (
レス) @page31 id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
miihoo(プロフ) - こんばんは。お仕事の方もお疲れ様でした。更新もありがとうございます。私もざっくり飲食関係の仕事なので身近に感じて毎回楽しみにしています。そしてこのお話の翔ちゃんが大好きです。続きを楽しみにしてますね！ (2021年10月2日 19時) (レス) @page27 id: 4ea876c979 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 続きが楽しみです！楽しみにしています！！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: afb0ab4a24 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは。元彼女め…とモヤモヤしますね( .. ) この後の展開がドキドキです！！更新楽しみに待っています！ (2021年5月29日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2021年5月23日 0時
