百三十一。浴衣 ページ11
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「苦しくない？」
今夏、一人目の浴衣着付けの依頼は
お祖母ちゃんのお店から付き合いのある、常連さんのお嬢さんだった。
『うん、大丈夫』
季節はもう、彼方此方で夏祭りや花火大会の催しがある頃。
今晩は、東京湾の花火大会があるようで。
「菜々ちゃん、本当にこの浴衣で良かった？
あなたくらいの歳なら、もっと華やかな色の浴衣でも…」
彼女が選んだのは
白地に藍色の丸繋ぎの草花の柄が冴える、古風で涼しげな浴衣。
年頃の女の子にしては、少し地味かもしれない。
『ううん、良いの』
『私、Aさんみたいな女性になりたくて』
「え？」
仕上げの帯を結んでいた私の問い掛けに、思わぬ答えが返って来る。
『Aさんを見てると、思うんです』
『日本の和の情緒あるものが似合う女性って、やっぱりステキだなって』
そんな意外な意見を述べる十代の彼女が、若い頃の自分と少し重なった気がした。
「…そうね。折角、日本人に生まれたんだものね」
和に徹して生きていたお祖母ちゃんの背中を見て育ったから
私自身、和にはそれなりのこだわりがある。
『ねえ、Aさんの彼氏ってどんな人？』
「…え？」
『お父さんたち、最近よく噂してるから』
『Aさんが、智さん以外の男の人と付き合い出したって』
菜々ちゃんのお父さん、高橋のおじさんも
私たちをよく知る一人だ。
『私。てっきりAさんは智さんと付き合ってるんだと思って』
…本当、みんな気持ち良いくらいに口を揃えてそう言う。
でも
そう見えるのが自然なんだというのは、分かっていなかった訳ではない
だから…
長年、間違いなく私の一番近くにいた智くんの気持ちを知って
今更だけど自分で不思議に思う時がある
どうして私は、智くんを好きにならなかったんだろうって。
「…菜々ちゃんは、好きな人。いるの？」
大学生ともなれば恋の一つや二つ、あって当然の事。
『うん…いるよ。サークルの、先輩なの』
そう言った彼女を姿見越しに覗き込むと、恥ずかしそうに俯いていた。
「もしかして、今日の花火。その先輩と行くのかな？」
私がそう訊いた途端
みるみる内に真っ赤に染まった頬が、可愛らしくて。
『Aさん。お父さんには、ナイショにしてね』
…そうだ。帯色と同じ深紅の綺麗な簪、さしてあげよう。
「もちろん。女同士の秘密ね」
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ティファニー(プロフ) - 琴乃さん» ありがとうございます。少しずつの更新ですが、よろしくお願いします。 (2021年5月23日 1時) (
レス) id: 0bbd7566ad (このIDを非表示/違反報告)
ティファニー(プロフ) - ぴぃさん» はじめまして、嬉しいお言葉ありがとうございます。私も、どちらかと言うと俺様な彼より甘くてやさしい彼が好きです。また宜しければ覗きに来てくださいね。 (2021年5月23日 1時) (レス) id: 0bbd7566ad (このIDを非表示/違反報告)
ティファニー(プロフ) - ゆり:)さん» もう本当に当初から、ずっと応援頂き恐縮です…温かいお言葉、ありがとうございます。嬉しいです。ノロノロは相変わらずですが、また書いて行こうと思いますので、よろしくお願いします。 (2021年5月23日 1時) (レス) id: 0bbd7566ad (このIDを非表示/違反報告)
ティファニー(プロフ) - まいさん» 嬉しいお言葉、本当にありがとうございます。返信も遅くなってごめんなさい。また書き始めたいと思うので、ぜひ今後もよろしくお願いします。 (2021年5月23日 1時) (レス) id: 0bbd7566ad (このIDを非表示/違反報告)
ティファニー(プロフ) - miihooさん» はじめまして、メッセージありがとうございます。嵐さんのお休み中に、少しでも癒しの力となれればと…よろしくお願いします。 (2021年5月23日 1時) (レス) id: 0bbd7566ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティファニー | 作成日時：2015年6月5日 16時
