やさしい食卓三。【SS】 (ページ30)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:132,966 hit

九十。俺の全てでページ30

.

翔さんはリビングから私をお姫様抱っこの状態のまま、ベッドルームに入って行く。

お姫様抱っこなんてされたの、初めてで。

どうにも照れ臭い…

そんな風に思っていると、

彼は優しく私をベッドの上に降ろした。

.

『…緊張、してる？』

私の身体を跨いで、両腕を私の顔の横に置いた彼が、私を見下ろしながらそう問い掛ける

「…うん」

私がそう言うと

彼は私の右手を取って、その筋肉質な素肌の胸に当てて見せる

すると、私と同じで

ドキンドキン…と、速く脈打つ鼓動を感じられた。

『Aだけじゃない』

『俺も、すげー緊張してる』

その彼の言葉で、少しホッとする

.

『…俺、ホント、Aが好き』

『好きで好きで、堪んない』

彼が絞り出す様な声でそう言って、私の頬をその大きな手で撫でるから

私も彼の頬に手を当てて、彼の目尻の辺りを親指でなぞる

.

「…私も」

「好きよ、翔さん」

真っ直ぐに見つめてくれる彼の熱い眼差しに

堪らず私の想いも溢れ出す

.

『…A、前にこんな事言ってたよな』

え？

『自分が想いを寄せた人が、同じように自分に想いを寄せてくれることって、凄い奇跡だって』

あ…

.

『…奇跡、起こしちゃったね？』

もう、泣かせないでよ________

自然と溢れ出る私の涙を、すかさず翔さんが拭い取る

『…俺は、ここに、居るから』

『俺は、Aを置いて何処かへ行ったりなんかしない』

“ある日、保育園に私を預けたきり、母は迎えに来ることは無くて”

“銀座で店をやっていたおばあちゃんに引き取られたんです”

『これから俺の全てで、Aの事を悲しませる、ありとあらゆるものから守るから』

.

『だから…俺のこと信じて、そばに居て欲しい』

.

こんなに幸せな涙を流した事なんて、これまでにあったかな

.

『好きだよ、A』

.

その言葉を最後に、

彼が私の唇にキスを落として

私たちは、熱く、お互いを求め合った_______