やさしい食卓三。【SS】 (ページ12)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:132,979 hit

七十二。勘弁して【和】ページ12

.

そう、この人は

プライベートが仕事に影響するような人ではない。

浮き足立ったり、ボーッとしたりなんて

そんな事は以ての外。

の、ハズだったんだけど

.

『…らいさん、櫻井さん？……櫻井部長！』

ガタッ________

『えっ…あ、ごめん』

あーあ、もう…部下困ってるよ

『ちょっと櫻井さん、どうしちゃったんですか？』

本当、どうしちゃったの？(笑)

『あ、いや…どうした？』

いやいや、アナタがね

『あの、この資料なんですけど…』

.

.

「翔さん、上手く行ってよかったね」

上層部と昼休みに出ていた翔さんが戻って来て、その肩を後ろから叩いてみる。

『え？ああ、そうだな……って、え！？』

「ちょっと、いつまでボケーっとしてるのよ」

本当、大概だ。

この人をここまでにさせるAさんは、凄いとしか言いようがない。

「昨日のデート。その調子だと、上手く行ったみたいね」

“次の日曜さ、Aさんとデートなんだよね”

「顔に出てるよ」

俺がそう言うと “参ったな…” と言って、恥ずかしそうに頭を掻いた。

.

『今日さ、Aの誕生日なんだよね』

“A” ね。へえ～…

「あ、そうなの？知らなかったな」

『俺も昨日知って、めっちゃ焦った』

そう言った瞬間、翔さんの携帯電話が鳴った。

どうやらメールの着信だったようで、それを開いて画面を食い入るように見る翔さん。

あーあ、またニヤニヤしてるよ

.

「…えーっと？

“お仕事お疲れ様です。お花、届きました。とっても綺麗…『おいっ！』」

後ろから覗き込んでいた俺に気付いた翔さんが慌ててメール画面を閉じる。

「え、昨日のデートで誕生日の事知ったんでしょ？

この時間にそのメールって事は…翔さん、いつの間に花の手配したの？」

流石、やる事が早い。

『もう、勘弁してくれよ…』

隙がなくてどんな状況も冷静に立ち回り、完璧に仕事をこなす

この “デキる男” のこんな姿を見るのは

結構…いや大分、面白い(笑)

こりゃ、今晩が楽しみだ。