やさしい食卓三。【SS】 (ページ4)

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六十四。明日が誕生日ページ4

その後も何品かのお料理を出して貰って

櫻井さんと会話をしながら、佐藤さんの美味しいお料理を愉しむ。

「すごく美味しいですね」

私が思わず櫻井さんにそう言うと、彼は嬉しそうな顔して

『でしょ？良かった』と言う。

本当に、どれを取っても美味しい。

本格的なイタリアンだけど、どこか家庭的な味も感じられる不思議な感覚だ。

『Aさんは和食を作る人だし、やっぱりたまにはこういう食事が良いのかなって思って』

彼らしい気遣いだ。

『あ、シャンパン切れてきたし、ワイン開けちゃおっか？』

美味しい食事と美味しいお酒で、会話が弾む。

彼の学生時代の話の流れで、私の学生時代の話にもなり。

彼の部下の生田さんの妻になった、親友の涼子との話にも櫻井さんは興味津々で。

『なんかアイツ、尻に敷かれそうだな～(笑)』

なんて言ったりして、お互いの共通の話題にも花が咲いた。

.

しばらくして

あれ？櫻井さん、喋らなくなったな

そう思い、お料理から視線を外して彼を見上げると

彼は私のことをジッと見つめていた。

「どうかしました？」

私がそう櫻井さんに問い掛けると

彼はゆっくり口を開く

.

『…Aさんって、本当にすごいよね』

…え？

『俺、あの花が “ダリア” って名前だってことも、その花言葉が “感謝” だってことも、勿論知りやしなかったし』

『Aさんがいてくれなかったら選べなかったプレゼントだよ』

『本当に、ありがとね』

“Aさんって、なんでそんなに良い女なの？”

「いえそんな、私は何も…喜んでくれると良いですね」

私がそう言うと、彼は優しく目を細めて笑った。

『そういやさ、Aさんの誕生日はいつなの？』

「あ、6月16日です」

私が何でもないようにそう応えると、彼はその大きな目を丸くする

『…え、明日！？』

あれ、なんかまずかったかな…？

そう思いながら彼の問いに頷くと

『そうだったの！？知らなかった…』と言って肩を落とした。

『ゴメン、何も用意してなくて』

彼が余りに申し訳無さそうにするから、私も居たたまれなくなって

「そんな、気にしないでください。この間あんなに素敵な帯留も頂いてますし」

私がそう言うと、彼は時計に目を向けてこう言った。

『でも、もしかしたら、一番におめでとう言えるかな？』