やさしい食卓二。【SS】 (ページ25)

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五十五。前を向いて【潤】ページ25

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『ああ、いるよ』

『…すげー、大切な人』

翔くんは俺の目を見据えて、迷う事なくそう言い切った。

“一生を共に過ごしたいって思える相手と出会えることって、すげー奇跡だと思わない？”

“俺さ、まだ分かんねーんだ”

あの頃の迷いの見えた彼は

もう、今の翔くんのどこにも見当たらなかった。

それほど良い人に出逢えたということだろう

『…お前も、負けんなよ』

え？

『あれだけ誰かの為に、真っ直ぐ気持ちぶつけられるお前なら。心通い合える相手、ちゃんと見つかるよ』

“好きだって言ったのは嘘だったのかよ！”

『だから、負けんなよ』

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この人は、本当にかっこいい。

男らしく端正で、男女問わず支持があって、世話好きで面倒見が良くて、仕事も完璧で。

俺はどこかずっと、翔くんの背中を追いかけて来た気がする。

…本当

良い顔するようになったなぁ、翔くん

彼をここまで真っ直ぐにさせた人は

いったいどんな女性なんだろうか？

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『こっち、いつまでいるの？』

別れ際に翔くんがそう俺に問い掛けた。

「来週中に香港に戻る予定だから、夜なら割と時間あるよ」

俺がそう言うと、翔くんは笑って

『じゃ、それまでに二宮と3人で飲みに行くか』

と言った。

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“…ごめん、やっぱり私、もう潤とは一緒にいられない”

“これ以上、こんな気持ちのまま、潤くんに甘えることは出来ないよ…”

3年振りの日本

夜の新橋の空気が、嫌に懐かしく肌を刺す。

…恋愛は、独り善がりではダメだ

どちらか一方の想いだけでは、上手く行くはずが無かった。

そんなの、分かってたはずなんだけど

それでも

それでも……君のそばに居たかった

どんな形でも

だけどそれが、間違っているということ

もっと早く気付けていれば

俺にも君にも、何か違う道があったのかな？

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…麻里奈、

翔くんはもう、前を向いてるよ

“私、やっぱり、翔のことが…”

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俺と共に過ごした日々が

どうか未来の君にとって、意味のあったものになりますように

君もどうか

“心通い合える人” と、出逢えますように______