やさしい食卓一。【SS】 (ページ4)

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四。年貢の納め時【翔】ページ4

『えー、それでは！

櫻井くんの本社帰国を歓迎して、乾杯！！』

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今更、歓迎会なんてのは小っ恥ずかしいけど

人の動きも激しいこの部で、長年日本を離れていたブランクを埋めるには有難いコミュニケーションの場だ。

『櫻井さぁん！

入社2年でニューヨーク支社なんて、すごいですね～！

尊敬しちゃう！！』

『独身って本当ですか～？

彼女もいないなら、私、頑張っちゃおーかなー！』

『どんなヒトがタイプなんですかぁ～？』

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うちの女性社員の割合はそもそも少なくて、

大抵が若い内にやり手の男性社員に見初められて寿退社していく。

所謂、社内恋愛が多い。

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そりゃ、こんだけ地位と能力の備わった男が揃った会社にいれば当然か。

ま、俺は社内恋愛は性に合わないみたいなんだけど…

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『あーあー、早速ターゲットにされちゃってるね～櫻井』

『モテる男は辛いな～』

『お前らに櫻井をオトそうなんて、百年早いわ！』

『チーフ、ヒドーい！』

酒の席とあらば、上司でもこんな話題へ進んで参加する。

『二宮さんは結婚しちゃったしな～』

『私、タイプだったのに～』

え、二宮が結婚？

思わぬ情報に面食らう。

「おい二宮、お前いつの間に結婚したんだよ」

そう問いかける俺に、何食わぬ顔した二宮が言う。

『去年の夏。まぁ、そろそろ年貢の納め時かなーってね』

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俺の記憶の中の二宮は女付き合いが派手なタイプで。

来る者拒まず、去る者追わず、的な。

要するに、特定の女は作らない奴だった。

…年貢の納め時。

まあ確かに、今年33歳になる俺たちにとって

結婚は当然、視野に入れるべき事の一つではある。

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『翔さんこそ、どうなのよ？

彼女の1人や2人くらいいるでしょ？』

ジョッキのビールを飲み干して、ニヤッとしながら二宮が言う。

「1人や2人って…人が遊んでるみたいに言うなよ。

今はいねーよ。っていうか、もう3年はいねーかな…」

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俺がそう告げると、

“3年”という言葉に反応した二宮が口を開く。

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『…てことは、アイツと別れてからいないんだ？』