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俺は飛んできた拳をあっさりとかわした。ネットの警備中に飛んできていた弾丸に比べたら遅いものだ。
流石に片手で受け止められる自信がなかったから、ポケットに手を突っ込んだまま右にずれる形になった。
相手の拳が空を切る音が響く。俺の教育係をやっていただけあって、実力はそこらのヤクザとは比にならない。なめてかかると危険な男だ。
「お前さえ…お前さえいなければ…!!」
『くどいな、お前。』
「お前は…俺の大切なものを全部奪っていくんだ…!!!」
『そこまで盗み癖ないんだけど。』
こんな状況でボケをかます俺に怒りを掻き立てられたのか、目を真っ赤に充血させて猛牛のように突進してくる。
冷静さを欠いたら、負けなのですよ。
いつだったか、狭間が俺に言った言葉。
そっくりそのまま使える日が来るなんてな。
突き出された拳を左に流すように避け、瞬時に左足でコケさせる。よろけた狭間の背中に左肘ですかさずエルボーをかまし、勝負をつけた。
占ツクで鍛えられた筋肉なめんなよ、とか言いたくなってきた。
『…おい、これ、親父に渡しといてくれ。』
「…なんだこれは…。」
『見りゃ分かっだろ。手紙だよ。燃やしたり捨てたりしたらぶっ飛ばすからな。』
倒れている狭間の心配など、するつもりはなかった。そんなに強くはやっていないし、意識があるのならそのうちすぐに起きるだろう。むしろ意識がはっきりしてしまう前にこの場から去らねばいけないくらいだ。
狭間と別れて、帰路を歩く。
さっき言われた言葉が、未だに心に引っかかっていた。
(お前は…俺の大切なものを全部奪っていくんだ…!!!)
どういう意味なのだろう。
知らず知らずのうちに、他人を傷つけているのか。
部屋に戻ると、Aが規則正しい寝息を立てていた。
『…結局布団出してくれてんじゃん…。』
自分の事は自分でやれ!とか怒鳴ってたくせに、何かと気を遣ってくれているのかな。
知らないうちに他人を傷つけて恨みを買って、そのせいでAが巻き込まれたりでもしたら…。
『…絶対許さねえからな…。』
その言葉に反応するように、何も知らないAは「ん…。」と寝言を言うのだった。
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白猫アリス(プロフ) - はじめまして!1から読ませていただきました!とにかくきょうくんのツンデレやばいもう語彙力低下しそう( ゚∀゚):∵グハッ!!更新頑張ってください! (2018年2月26日 23時) (レス) id: 7ad032ce1b (このIDを非表示/違反報告)
孤独の錬金術師×孤独の獄卒×孤独の海賊×孤独の妖怪 - おーーーーーー!!!!。 (2017年10月19日 6時) (レス) id: 507f5c40b1 (このIDを非表示/違反報告)
丸干し - ツンデレ! I love ツンデレ!! きょうくん最高!! (2016年12月15日 17時) (レス) id: ca2c405926 (このIDを非表示/違反報告)
カミツレの花(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしていますっ(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年11月5日 23時) (レス) id: 5332a3f4a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜雫(プロフ) - 1から読まさせていただきました!きょうくんツンデレご馳走様です!!更新カバディしながら待機してます( ºωº )!!! (2016年8月25日 2時) (レス) id: 7a00add657 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/11235/
作成日時:2016年1月2日 22時