占ツク「の中」にいます 3

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君の細い右手首を掴んで走る。どこかのラブソングの歌詞みたいでロマンチック〜と言いたい所なのだが、状況が状況なだけにそんな冗談が通用しない。



自分の邸だが、正直どこまでが敷地内なのか知らない。ただ下手に脇道ややぶの中に入ればブザーがなることは知っているから、逆に正門から突破した方が安全である。

家の敷地内に山とか、ふざけてんのかこの家。自宅だけど。

しかもその山で猪出るからね？それ狩って勝手に食ってるからね？アホちゃうんか。

…話がそれた。



走っては止まり、止まっては走り。
ゆっくり素早く正門まで足を進める。

「…あれ正門？」
『割とちゃっちいだろ』
「自分ちの家の門をちゃっちいとか言うなよ。一般家庭に比べりゃよっぽどでけーわ」

小声で口をとんがらすAを見ていると、愛おしくなる。こいつを傷つけるやつは許さない。俺が守らなきゃ。



「え、なに、どしたの。」
『…好きだよ。』
「は。」
















「最期に愛を伝えとくとは、なかなかに気分が悪いことで。言い残すことはございませんか。」

背後からの、声。









…俺が、守らなくては。

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