占ツク「の中」にいます 3

11-7 ページ22

私は確かに実の息子に暴力をふるった。紛れもない事実だ。消せない記憶、消せるなら消してしまいたい。

何故もっと本人を見てやらなかったのだろうか。いくら母親に似てるからって、私の妻と私の息子は同一人物ではない。別の人間なのに。

何故似てるというだけで、あそこまで、あんなに壊してしまうまで傷つけてしまったのだろうか。

自分が権力をなくし、体力をなくし、人望をなくし、1人で何も出来なくなってからようやく、自分が今まで傷つけてきたものの多さを知った。取り返しのつかないことになったのだと。


妻も息子も臣下も失った今、私は、ただの老いぼれた元ヤンキーのジジイでしかない。


今なら言える。「ごめん」と、ただ一言。

許されることはないのだろうけれど。

この一言を言えるようになるまで、私は時間をかけ過ぎてしまったに違いない。


しかし、私の間違った判断のおかげで、今、私は「A」という娘に会うことが出来た。


そう考えると、いよいよ何が正しかったのかが分からなくなってくる。


いくら年を重ねても、未だに答えは見つからないままだ。

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