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先程からここが牢屋なのにも関わらず、恋バナで盛り上がっている。所詮あのバカと同じDNAを持ったおっさんなのだ。こういうJKのような話題でキャッキャとはしゃぐところは似たらしい。
「そうか…あんなガキだったのになぁ…そうか、そうかぁ…あいつがなぁ…」
家庭の事情からか昔からあまり可愛がってやれなかったことに、後悔をしているようだ。始めのほうは楽しそうにニヤついていた組長は、だんだんと涙目になり、声も出さず悲しそうに頷くだけになった。
…お父さん…
父親の顔を知らない私にとって、組長の涙はなにか刺さるものがあった。
私にも、こんな風に、私のことを思ってくれるお父さんは、いたのだろうか。
私にも、自分のために泣いてくれるお父さんは、いたのだろうか。
私にも、両親と過ごした時間はあったのだろうか。
私にも…
…
「…!」
自分が泣きそうになっているのに気づき、自分で驚いた。
幸い組長はこちらの涙に気づいていない。急いで顔を拭い、声をかける。
「あなたの息子は、いいやつです。顔はちょっと怖いけど、優しくて、面白くて、お人好しで、甘えん坊の、大馬鹿野郎です。」
最後の大馬鹿野郎にウケたようで、組長はまた笑いだした。
「そうか、大馬鹿野郎か!こりゃ面白いやつに育ったようだな!早く会いたいな、顔が見たいよ。」
その後にぼそっと「あいつは私に会いたくないかもしれんがなぁ…」とこぼしたのを、私は聞き逃さなかった。
「…いいでしょう、会わせてあげますよ、組長」
背筋が凍りつくような、刺々しい声が2人を刺す。
天井の板の1枚が取り外され、上から見覚えのある顔が見下ろしてきた。
「今夜、会いたいと願っている人がここに来ますよ、一緒にあの世へ送ってやる。」
「どうせ3人のうち、天峰親子の戸籍は既に無いしな。」
不気味な笑い声
「最愛の息子を、最愛の人を、それぞれ待ちわびてる事だな。」
天井の板が、元通りにはめられる。
静寂。
時計の針は18:00をさしていた。
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白猫アリス(プロフ) - はじめまして!1から読ませていただきました!とにかくきょうくんのツンデレやばいもう語彙力低下しそう( ゚∀゚):∵グハッ!!更新頑張ってください! (2018年2月26日 23時) (レス) id: 7ad032ce1b (このIDを非表示/違反報告)
孤独の錬金術師×孤独の獄卒×孤独の海賊×孤独の妖怪 - おーーーーーー!!!!。 (2017年10月19日 6時) (レス) id: 507f5c40b1 (このIDを非表示/違反報告)
丸干し - ツンデレ! I love ツンデレ!! きょうくん最高!! (2016年12月15日 17時) (レス) id: ca2c405926 (このIDを非表示/違反報告)
カミツレの花(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしていますっ(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年11月5日 23時) (レス) id: 5332a3f4a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜雫(プロフ) - 1から読まさせていただきました!きょうくんツンデレご馳走様です!!更新カバディしながら待機してます( ºωº )!!! (2016年8月25日 2時) (レス) id: 7a00add657 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/11235/
作成日時:2016年1月2日 22時