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沈黙。
スプーンが皿に当たる音だけが響く。カレーは普通に美味しい。中辛だけどそこまで辛くない。蜂蜜を入れたらしき痕跡があったから、そのせいだろうか。
『美味い?』
「うん。美味しい。」
『なら良かった。』
変に緊張したせいか、腹が猛烈に空いていた。私の皿は瞬く間に空になっていく。その様子を見て、目の前の長身男子は微かに笑った。
寂しげな笑いだった。
見てるとこっちまで悲しくなる。
「…はーい目元が下がってるよ!笑え!ほら!口角を上げる!!」
『いっててて!!馬鹿!無理やり引っ張んじゃねえよ!!』
「笑え!」
『あからやえろって!!(だからやめろって!!)ほーいうほこがひらい!!(そーいうとこが嫌い!!)』
「さっきは好きとか言ってきたくせに、なんやねん!」
『え?』
「え?…あっ、」
『…はっ?お前、さっき、え、ちょ、起きてたわけ?』
完全に墓穴掘ったな、私。
あからさまに狼狽する卬を目の前に、私は全力で声を振り絞った。
「え、いや、別にそういうわけじゃねえよ!!」
どういうわけだよ、と自分にツッコミを入れる。
『…。』
何も話さなくなってしまった。無言が一番怖い。
『…どうなの?』
「は?何が?」
『何が?じゃなくて、返事!』
「あ、そういうこと?ってか今!?」
『…Aの事が好きです俺と付きあってください返事は!?!?』
「は、はいっ!」
条件反射で返事するとかなんなんだわもう。そりゃ「返事は!?!?」なんて言われたら「はい」って答えるだろ。
『…今条件反射で返事した?』
「あ、うん、え、いや、別に、その、なんていうか…。」
返事を濁すと、ため息をつかれた。
『何かなぁ…もっと高校生らしい感じにしたかったのに、なんかグダグダになっちゃったなぁ…何故。』
「グダグダしてこそ私達らしいじゃないか!!」
『そのテンションなんか嫌だ。』
何かに気づいた卬が私の顔を見てふふっと笑う。
『おま、それ、口周りすげえことになってる。』
指を差して笑うんじゃない。カレーが付いているのは分かったから。
ティッシュで拭いて、確認する。
「取れた?」
『…。』
『…右側にまだ付いてる。』
「こっち?」
『あー、逆。ちょ、ティッシュ貸せ。』
「自分でやるからいい。」
『いーから、じっとしてろって。』
「ちょ、!」
今回は、頰じゃなかった。
一瞬だったけど、口だった。
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白猫アリス(プロフ) - はじめまして!1から読ませていただきました!とにかくきょうくんのツンデレやばいもう語彙力低下しそう( ゚∀゚):∵グハッ!!更新頑張ってください! (2018年2月26日 23時) (レス) id: 7ad032ce1b (このIDを非表示/違反報告)
孤独の錬金術師×孤独の獄卒×孤独の海賊×孤独の妖怪 - おーーーーーー!!!!。 (2017年10月19日 6時) (レス) id: 507f5c40b1 (このIDを非表示/違反報告)
丸干し - ツンデレ! I love ツンデレ!! きょうくん最高!! (2016年12月15日 17時) (レス) id: ca2c405926 (このIDを非表示/違反報告)
カミツレの花(プロフ) - 更新待ってました!これからも楽しみにしていますっ(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年11月5日 23時) (レス) id: 5332a3f4a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜雫(プロフ) - 1から読まさせていただきました!きょうくんツンデレご馳走様です!!更新カバディしながら待機してます( ºωº )!!! (2016年8月25日 2時) (レス) id: 7a00add657 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/11235/
作成日時:2016年1月2日 22時