48. 決戦は明後日 *snz/ all ページ1
とあるホストクラブで発砲事件が起きた。
代わる代わる女を連れ、その店に通っていた常連のヤクザが別の組幹部の愛人を連れて来た事で、ヒットマンを送られたらしい。
ハッ。たかがオンナ寝取られたくれーで、くっだらねー。
「……極義会と岩井会は抗争になるだろうな」
「ああ、今ごろサツが目を光らせているに違いない」
「当面はうちも大人しくすべきか、」
「何言ってるの、鶴、ココ。今こそどさくさに紛れて同時に潰すチャンスよ。そもそも梵天は組対の担当じゃないわ」
あっけらかんと放つA。温和なようでいて、流石の生い立ちというべきか、時に大胆で冷酷なコイツのこういう所は爽快で気持ちが良い。
無意識に口角が上がるのがわかる。
「Aがそう言うっつー事は、何か策があンだろーよ。なァ?」
「二年前、極義会会長の愛孫が襲撃された事件の犯人は未だ不明。それを岩井会の仕業だったと細工して、見つけて始末したのが梵天だって恩を売る」
「へー?ンで、抗争が激化して両組弱体化したところをブッ叩いてトンズラってか」
「That's it man.(正解)」
Aの言う通り、ウチは散々アコギな商売しといて義理人情を宣う甘っちょろいヤクザとは違う。
随分と昔、暴力団排除条例を音読しては、これでどうやって生きてけっつーンだよ、と腹を抱えて笑ったものだ。
無論、ビジネスとして形式上友好的な関係を築いている暴力団組織もあるが、今回はどちらもウチよりダンと格下。
つまり邪魔でしかねー、遠慮も無用。
「……指揮はAだ」
マイキーが黒々とした瞳を俺らに向けた。
因みに今はまだ午前、Aの作った朝メシを囲みながら幹部会議中である。
マイキーの前には食べ終わったお子様モーニングプレート、「食ったら眠くなる」と。
数ヶ月前まで食事にも睡眠にも無頓着、というより死に急いでいる風にも見えたマイキーの台詞だとは信じ難い。
131人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月26日 19時